独立記念日に自由と平等を思う | マウントラシュモア 【サウスダコタ州】
ワイオミング州から再びサウスダコタ州に戻ってきて、次なる目的地はマウントラッシュモア。
歴代大統領4人の顔が並んだマウントラッシュモアは、アメリカの象徴的な場所の一つだろう。
ここを訪れたのは7月4日のアメリカ独立記念日の翌日。
独立記念日は1776年にアメリカがイギリスからの独立を宣言した日に由来する。
アメリカではとても重要な祝日の一つで、各家々ではアメリカの国旗が掲げられ、BBQを仕込んだりして(巨大な肉を15時間くらいかけて低温スモーク調理するブリスケットは絶品)家族と共にに過ごしたり、地域で開催されるイベントに参加したり、夜には花火があちこちであがるなど賑やかな一日だ。
アメリカがいつも以上にアメリカらしさを発揮する独立記念日に、自由と民主主義の歴史を象徴するマウントラッシュモアへやってきたのも面白い巡り合わせだ。
なんとなく顔が刻まれているのは知っているが、それは誰なのか。
到着するまでに、4人の大統領について予習しながらドライブ。
ワシントン、ジェファーソン、ルーズベルト、リンカーン・・・
ワシントン、ジェファーソン、ルーズベルト、リンカーン・・・
どうしても二人目のジェファーソンの名前が覚えられない。一瞬で忘れる。
昔から、英単語、歴史なんでもそうなのだが、暗記ものでなぜだかどうやっても絶対に覚えられないものがある。
もちろん普通に記憶力が乏しいという大前提もあるが、頑なに脳内にとどまるのを拒絶しているのではないかと思うくらい一瞬で跡形もなく消滅してしまうのは一体なんなのか。
でも、独立宣言の起草者というのだから、この日があるのも彼のおかげ。
ジェファーソン、独立宣言、ジェファーソン、独立宣言・・・ぶつぶつ。
そうだ。暗記にはストーリーが欠かせない。
私がなんとなく勝手に想像していたマウントラッシュモアは、静かな山の中にひっそり佇んでいる姿だった。
がしかし予想に反し観光客が多いこと多いこと。
普通に観光地だった。
山岳彫刻までは立派なエントランスと土産屋、そして道沿いにはアメリカ50州の旗が掲げられ、行き交う人も多い。
その突き当たりには彫刻をバックにした大きなステージと客席が用意されており音響設備もバッチリ備えられていた。
ラッシュモアの彫刻は山の岩壁を直接掘り込まれており、各顔はおよそ18メートルあるそうだ。
そう言われると結構大きいのだなぁと思うが、実際に見てみるとそれほど大きく見えなかった、と言うのが正直なところ。
単に近くまで行ってないからでもあるし、目の前に人工物がありすぎてサイズを比較できてしまうというのもあるかもしれない。
製作されたのは1927年から1941年までの14年間。実はこれ単なる記念モニュメントではなく大恐慌の際の公共事業として地元の雇用の創出と経済活性化を目的としたプロジェクト、つまりニューディール政策の一環、ということだそうだ。
ふーむ。石屋さんかぁ。
一つ気になったのは、左端のワシントンと右端のリンカーンの彫刻完成度の差だ。リンカーンは顔だけ掘って終わっているようだが、これでいいの?飽きちゃったの?
そう思って調べてみたら、やっぱり当初の計画通りには完成していないらしい。
デザインとしては四人とも上半身まで製作するはずが、第二次世界大戦の勃発や指揮していた彫刻家の死去などにより作業が中断され、そのままこれを完成形としてプロジェクトは終了したのだそうだ。
これでいいの?とは思ったがこれもまたアートとしてカッコよく見えてくるから不思議なものだ。
戦後再び作業を再開することもできたのかもしれないが、未完のまま残したことに粋を感じる。
帰り道は彫刻の脇を通り抜けていく。
ほんの一瞬現れたワシントンの横顔はキリリと美しかった。
彼が夢見た自由、平等、団結したアメリカ。
当時の自由や平等と現代のそれらではその意味も大きく変わってしまったのだろう。
あの時代に比べれば自由で平等な世になったはずなのに、まだまだ課題は多い。
そして本来の自由や平等からかけ離れたところで窮屈さが加速し疲弊する人々。
アメリカだけではない。世界に漂う謎のうねり。
最近ちょっとずつ、それらに対する揺り戻しみたいな動きもあり、それってやりすぎじゃない?と問題提起する作品に出会うことも多い。
その度に私もとても考えさせられる。
そしてこの秋には47代目の大統領が選出される。
岩に刻まれた大統領4人は今それをどう見つめているのだろう。