冬季賞与の行く末
気温がぐっと下がった。冬である。
街はイルミネーションや豪華な装飾でキラキラ輝いており、行き交う人もどこか浮かれ気味である。街中が賑やかな12月。皆、何かを待っているようである。
12月に皆が待ち遠しくなる重要なイベントは何か。
言うまでもなく、ボーナス支給である。
私の今年のボーナスは、物価高による賃上げ効果もあって、気持ち多めであった。支給前に案内のメールが来るのだが、作業の手を止めて確認した。その直後、同期がニヤニヤしながらやってきた。目を合わせただけで、何が言いたいか分かった。彼は心の友である。
さて、使い道について、今までのボーナスは事前に使い道を考えていなかったが、今回は違い、前々から狙っていたものがあった。マッキントッシュロンドンのコートである。
マッキントッシュはイギリスのブランドで、英国コート三大ブランドの一つと言われている。コートにはゴム引きという、生地の間に薄いゴムを敷く手法が施されており、ゴムのおかげで風を遮断し、軽くて暖かいコートなのである。デザインも私の好みで、シンプルでかっこよい。
以前、実店舗へ下見に行ったことがある。やはりいいなあと思ったものの、値段を見て怖気付き、足早に退散してしまった。店員さんも、こんなへなちょこが買うはずがないとわかっていたのであろう、接客も無しであった。
しかし、今はあの頃とは違う。
冬季賞与という大きな力が私には宿っている。大股で、肩で風を切って歩く。全身から「私、買っちゃいますよ?」のオーラを全開にして、支給後の週末、改めて店舗へ向かった。
店舗には様々なコートがあった。生地が異なるもの、襟の形が異なるもの、色が異なるもの。欲しいコートはイメージしているものの、実際に目の前にすると「いやこれもいいかも」と思ってしまう。
そんな私に店員さんはとても優しくして、着たいと思ったコートは全て着させてくれた。見る分にはかっこいいコートであっても、やはり似合う似合わないがある。全部着ることで後悔のない選択をすることができた。晴れやかな気持ちで、泣きたくなる額の支払いに進んだ。
支払い時にポイントカードの作成を勧められた。ブランドのポイントと、商業施設のポイントを合わせて計一万円分のポイントが返ってくるという。「今の支払いを安くしてよ」という心の声を抑え、「ありがとうございます」と告げた。こんなにもらうと、次も使わないとと思ってしまう。賢い策略である。
買ったコートを後日着てみた。軽くて暖かく、着ていて気持ちがよい。よい買い物をした。