小説・成熟までの呟き 28歳・1
題名:「28歳・1」
2018年4月、美穂はオリーブの生産に携わって3年目となった。この頃、花見が内容の交流会が開催された。大尾島在住の人々が参加したのだが、島出身の者や、美穂のように移住してきた者もいた。その中で、メガネをかけた男性がいた。体が細くて割と地味である。美穂はその人に話しかけてみた。「初めまして。」話によると、男性は美穂より2つ年上の1988年生まれだという。今は食品加工の工場に勤務しているという。気になる人で接しやすい雰囲気だったため、美穂とその人は連絡先を交換した。後日、美穂は休日にその者と会った。すると、その者のこれまでの経緯を知った。名前は康太で、出身は県庁所在地の高梅市だという。驚くことに、美穂と同じ明能大学卒業であった。社会学部であるという。しかし、当時からの話は美穂にとっては想像がつかない内容だった。「在学中就職活動をしていたが、駄目だった。卒業後はアルバイトしかできなかった。面接を何度も受けても、結果は同じだった。居心地が悪くなり、島に来て今の仕事を始めて今は3年目だけどずっとパートのままで、社員になれない。でも高梅市には戻りたくない。俺って、そもそも最初から就職に縁がない人間だったんだろうと思う。でも今年で30歳になるけど、どうしていったらいいかわからない。私より後に入ってきた人ばかりが、他の企業で社員だった経験ので最初から社員になっている。俺にはきっと会社で求めるコミュニケーションがそもそもとれる人間じゃないからかもしれないけど、不満だ。」と悩んでいた。美穂は、それまでの人生が恵まれていたことに気づいた。同じ大学を出て、すぐに就職できたし今の勤務先でも研修して半年後に社員になれた。何が基準で大きく分かれるのだろう。美穂は疑問に思った。美穂は何か可愛さのある康太が気になり、その後も定期的に会うようになっていった。