小説・成熟までの呟き 47歳・2
題名:「47歳・2」
2037年秋、美穂の息子の健は中学3年で受験勉強をしていた。勉強は割と得意で、2038年冬に臨んだ高校入試で、県の最上位の高校に合格した。中学校卒業後、健も姉と同様に住んでいた大尾島を離れることになった。弟の健は姉の日奈子よりも、両親を慕う気持ちが強かった。だから寂しそうだった。母親の美穂は、「週に1回は島に帰れるから。」と言っても態度は変わらなかった。すると、康太は「お父さんは高校生の頃は、親と一緒にいることが苦痛になった時もあったなあ。」と言った。健は不思議がった。康太は続けて、「高校生の時って心が自立したい、自分で物事を決めたいと思っていく時期だと思うんだ。1人で静かに自分自身について見つめ直す時って必要な気がする。それって将来にとっては大事だと思うんだよなあ。もし、心細くなったらいつでも連絡しておいで。」と言った。その後康太は、「健、体育の授業でいつも苦労していたんだよな。ごめんな、お父さんが体が弱いがためにそのように生まれてきてしまって・・。」と言い、「でも同級生よりも何倍も苦しんで汗や涙を流した分、報われるって思うんだ。世の中がそうだって思いたい。もしそうでないなら俺達が報われるようにするから。だから、この先島を出てもしどうしようもないことがあったら、また島に戻っておいで。あっ、また島で暮らそうっていう意味だからね。俺達が健にとっての心が安らぐ居場所を作るから。」と言った。健は全てを理解できてはいなかったが、「ありがとう。」と言い、少し表情が明るくなった。そして、健は島を出た。こうして、自宅は美穂と康太の2人となった。そのような中、農園には大きな動きがあったのである。