小説・成熟までの呟き 46歳・1
題名:「46歳・1」
2035年秋、美穂の娘の日奈子は部活動を引退した後で、受験勉強に取り組んでいた。しかし、勉強はあまり得意ではなかった。2036年冬、日奈子は高校入試に臨んだが第一志望の県立高校に不合格になってしまった。致し方なく、二次募集の県立高校を受験し、合格した。その後、日奈子は中学校を卒業した。部活動に打ち込んだ時代であった。日奈子が暮らす大尾島には高校がなく、出身者は高校進学と同時に対岸の高梅市にある島所有の寮に入り、生活を始めることになる。日奈子は中学校卒業をもって、島を出た。とはいっても、船で1時間の距離で、毎週1回は島には帰って来る。寮では、毎日朝食と夕食は出る。日奈子が島を離れる時、美穂は「日奈子は強いから、離れ離れになってもあまり心配はしていない。」と言った。日奈子も特に暗い表情は見せずに、島を離れていった。4月に、日奈子は高梅市にある県立高校に入学した。新たな勉強が始まった。しかし、1か月後、美穂が46歳になった頃、実家に戻った日奈子は暗い表情をしていた。あまり勉強をまともにしなくて周りが乱れていたり荒れている生徒が多くて、戸惑っていたのだ。自分の理想と遠ざかっていく日々となった。日奈子の髪は定期的に父親の康太が切っていたが、日奈子に「髪、切るか?」と尋ねるが、日奈子は「ううん、いい。」と言って部屋の中に入ってしまった。母親の美穂は、そんな日奈子に声を掛けたがあまりはっきりとした反応はなかった。「今はあまり答えたくないのかなあ。もう少し日奈子のきもちがはっきりするまで待ってみよう。」と思い、美穂はしばらくそっとしておくようにした。高校入学した当時は日奈子はベリーショートの髪型だったが、夏頃には髪の長さは肩を超えていた。
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