『テンシンシエン！』最終話

◆「イッテキマス」

２０２１年９月１日、水曜日
　結局、私はといえば・・・ハローワークで紹介された素材メーカーから内定をいただき、今日からシステム課員として出社することになった。
　内定をもらっていたNEKSTは辞退。一次面接を予定していた明治電工、山崎重工も、面接そのものを辞退した。

　結果的に、山泉さんの件は、私の就活に大きな影響を及ぼした。加速していた転職活動を失速させ、私からやる気を削いだ形になった。そんな意味では、彼の仕返しは成功したのだろう・・・

　今日からお世話になる会社は、神田に本社を構え、埼玉、神奈川、山梨に工場を持つ、従業員２８０名ほどの素材メーカーだ。私は、一兵卒の本社システム課員として、全社の基幹システム刷新プロジェクトに従事する。それが今の私のありようだ。年収も半分以下になったが、まぁ食っていけない訳ではない。業界の異なるこの会社では、私のことを知る人間もいないから、変に煽てられることもない。私はリストラされ、浦和のボロアパートに一人で住む、ただのパソコンに詳しいおじさん・・・それで良いのだ。

　９月の日差しは、まだ真夏のように強い。でも、あえてクールビズなんてしない。しっかりとネクタイを締め、そしてスーツの上着を着る。

ゼロからの再出発を決めた私には、これが良いのだ・・・

「山泉さん、行ってきます・・・」

おわり■

■あとがき＋作者紹介