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不妊症#16 台風と医師と、採卵直前の漫画オタの讃歌

忘れもしない、台風10号サンサン。台風も偏西風とかに翻弄されて生きてる側なんだと、人生30年で初めて知った。


台風と採卵

小学生のとき『夢幻伝説 タカマガハラ』という冒険少女漫画が大好きだった。勾玉を拾ってホル・アクティになりたかったし、須佐之男命の運命に泣いて、太陽を見ては天照大神ありがとうと思ったものだ。
だから、これまで散々、神うるさいとか言ってきたが、天気はさすがに神に祈るしかないと思っている。

8月の末から予報円は刻々と書き換わり、サンサンは、遂にわたしの住む地域に到達した。あー、ずれ込んでずれ込んで、採卵日にぶち当たる予報じゃないか…!祈りはやはり届かないのか。
どうなってしまうんだ。

注射の末に膨れ上がったお腹を撫でた。
わたしの努力の結晶、まだ命未満の、卵たちよ…。


台風と医師

気が気じゃなかったので、追加の注射を貰いに行った日に、先生にやたらと台風不安と言ってみた。
が、無駄なアピールとなった。拍子抜けするほどあっけらかんとした返事だったから。

台風が直撃しても、採卵はずらせないので。やります。病院来てください。

不安の方が、びゅんと吹き飛んでいった。
頼もしすぎんだろ、先生ぇ…。



そして突然のハガレン考察

大切なことは漫画から教わった。
診察室を出て、会計まで暇を持て余した待合室。今日も元気に中二病を発症した。

『鋼の錬金術師』に出産の話がある。
豪雨の中、山奥の自宅で妊婦が破水。落ちた橋の再建を試みるも、神の業・錬金術は役立たず。結局、爺さんが馬に乗って隣町まで医者を呼びに行き、少女が、幼少期に見たことある程度の医学書の記憶を頼りに、赤ちゃんを取り上げることになった。そして見事お産は成功。
神がいようがいまいが、人間は強い

他にも、ハガレンには神と人間について考える話が多い。主人公のエドワードが、第一話から人体錬成に失敗した自分を揶揄して「神に近づきすぎた英雄は翼をもがれて地に落とされる」旨の発言をしたり、錬金術の真理に到達した人のポーズがまるで神への祈りだったり。イシュヴァールもそう。

そういえば、あれ?
細胞分裂で受精卵から増殖するのって、質量保存の法則無視してるし、無から有を作り出せない等価交換の原則も、命において成り立ってないよな?は!錬金術で人体錬成できないのって、そういうことか!?ジーザス!!

人間にとって、不老不死より世代交代が最上。
『NARUTO』でも語られているし、漫画あるあるメッセージだったりする。なるほど。現実世界における生殖補助医療頑張るのって、生きることそのものやん。めっちゃ尊いじゃないですかぁ…。人間って、面白っ。


採卵と医師(妄想)

生命の誕生に携わっているだけでもかっこいいのに、この台風の一件で、生殖補助医療は、恐れず神に近づく科学者たちの熱き戦いなのだと思わされた。痺れるぜ。

壮大な人類の戦いを前に、自分が仕事が休めないとか、後任者の育成とかで発狂しているのって、めっちゃ瑣末なことじゃないか?いや、実際難しいんだけど。
今まで先生に仕事のスケジュールが…とか嘆いてたの、勝手にちょっと恥ずかしくなった。

結果的に台風は逸れて、雨も風もない日に採卵してもらうことができ、ありがたい限りであった。


オタ話を発散させていただき、ありがとうございました。
採卵周期のホルモンバランスの崩れも心配の一つだったが、こんな風にメンタルは良好の全開でいられる人もいる。哀れ。


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