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【欧州ひとり旅】寂しい、淋しい。

 宮殿の庭園にあるベンチでお昼ご飯を食べ終わったあと、眠くなる前に、庭園を散歩することにしました。あまりにも広大でしたから、正直、庭を階段の上から眺めるだけでも良いかなと思っていたのですが。

 10月の西ドイツは、北海道よりも高緯度に位置しているにもかかわらず、暑いです。旅をすればするほど気候の多様さに驚かされ、地球という惑星は本当に不思議なものだなあと感じます。夏花の季節は少し過ぎていたようですが、それでも、きちんと剪定された木々や庭石を見ると、わたしも王族になった気分になります。とても綺麗です。

 ついつい長居してしまい、いつの間にか、庭園にはわたしだけ。この宮殿、世界遺産にも登録されていてとっても素敵が詰まっているのに、なぜだか、観光客をあまり見かけません。どちらかというと、地元の住民に愛されているって感じです。ですから、太陽がわたしの目線くらいの高さになる頃には、子ども連れも恋人たちも、みんな家に帰ってしまいます。ちょうど近所の公園みたいに。そんな愛され方をされて、この宮殿は嬉しそう。夕刻の宮殿と庭園がオレンジ色に染まっているのは、夕焼けに照らされているからだけではないはず。きっと嬉しいのです、そう思います。

手入れの行き届いた宮殿の庭園

 帰路につく前にもう一度ベンチに座り、ミネラルウォーターをひとくち。目の前には、パイナップルみたいな、いやあれは友だちのルーカスの髪型みたいな。とにかく、鉢植えがひとつ。何か言いたげです。「旅人さん、この宮殿はどうだった?素敵でしょう?」「旅人さん、あなたも早く帰らないと、暗くなっちゃうよ」「旅人さん、もしかして、あまり元気じゃない?」庭園を独り占めするわたしに、この鉢植えは、何を思っているでしょうか。いえ、きっと何も思っていませんね。ここまで全部、わたしのひとり言。広い広い宮殿の庭園は、独り占めするには、少し寂しいな。

ありあのひとり旅日記より抜粋

友だちのルーカスの髪型みたいな鉢植え

in Brühl, Germany Oct.2023
CONTAX ARIA × KODAK GOLD 200

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