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【欧州ひとり旅】ホーエンシュヴァンガウは歌い奏でる

 10月とは思えない暖かさに、バイエルンの緑は枯れを知らず。アルプスの雄大さはわたしのまなざしをキラキラさせるばかりで、きっといつもよりも深呼吸の回数が多いのは、体全体が、南ドイツの空気を欲しているからに違いありません。でもそれ以上にわたしの脳を支配するのは、およそ眠気。

 これは、心地よいなんて生ぬるい言い様ではありません。たしかに空気は生ぬるいのですが、小鳥のさえずり、アルプ湖の藍色、オーストリアやスイスにまたがる山脈の輪郭、擦れる枝葉の音、そしてこの陽射し。ここホーエンシュヴァンガウで感じることのできるあらゆるものごとが歌い奏でて、わたしの脳を支配しているのです。

 指揮者はたぶん、このお城。時の王様であるルートヴィヒ2世が建てたこの壮麗たるノイシュヴァンシュタイン城が、歴史という楽譜を丁寧にめくりながら、今日もわたしたちを楽しませています。

ありあのひとり旅日記より抜粋

in Hohenschwangau, Germany Oct.2023
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