あたりまえを磨く滋味深い家 ~アーキロイドメンバーにインタビュー 建築家福井典子第3編~
伊礼設計室で、手仕事の設計
――こうやって振り返ると、本当に1冊の本との”出会い”が福井さんの人生の方向を決めたんですね。卒業後、伊礼設計室での生活はいかがでしたか。(1冊の本=『住宅巡礼』中村好文著)
福井「住宅設計の実務にどっぷりの11年間でした。」
――文字で表現出来るか不安なほどの”どっぷり”ですね(笑)
福井「ふふふ(笑)伊礼先生はもちろん、事務所の先輩・後輩、そして工務店・職人のみなさんに育ててもらった11年だとおもいます。施主の方々への提案(注文住宅)や規格住宅、いろんな住宅と向き合いました。」
――インタビュー前に伊礼設計室での担当数を一緒に数えたら20弱でしたね。この数については多いか少ないか、どう思いますか?
福井「うーん。難しい質問ですね。年に平均2棟未満というのは、ハウスメーカーや工務店のこなす数で考えると少なすぎると思います。でもハウスメーカーはチームプレーで、営業の情報を共有して設計が数名でいくつかのコンセプトを作るし、インテリアの担当もいます。私たちのような手仕事系は1人の担当者が全て担うので、これくらいの数になると思います。」
見届ける、伴走する家づくり
――仕事の進め方が大きく違いますね。
福井「そうなんです。それぞれの良さがある中で伊礼設計室を選んだのは、伊礼さんと担当者の間ですべてのことを決めるから、というのが大きいです。自分が把握していないところがなくて、一通り住宅がどうやってできているのか、主体的に力をつけられると思いました。プランを描いて終わりではない、見届ける、伴走する家づくりに共感しています。」
――全部見る、伴走することの良さってどんなところにあると思いますか。
福井「ちょっと話が戻るんですが、私は『住宅巡礼』が好きなんですけど」
――そうでしょうね(笑)
福井「ふふふ(笑) でも、なんで好きなのかが言語化出来ていなかったんです。なんというか本に出てくる家は全部、どちらかといえば地味で、でもどれも素敵に思えるんです。それがなんでなのか気になっていました。」
建築家がそれぞれが気を配ること
「ある時中村先生と『住宅巡礼』について話した時に、先生が何を考えて(住宅巡礼を)作ったのか聞いたことがあって。それぞれの建築家がどんなことに気を配って設計しているのか、それを気にしながら書いたそうなんです。それを聞いてとてもしっくり来ました。」
――『住宅巡礼』が好きな理由がわかったということですか?
福井「はい。それぞれの建築家が、気にするところ、気を配るところを最初から最後まで責任を持って形にしているような仕事が好きなんだと思ったんです。わかりやすい派手さはないけれど、それが詰まっているのが好きです。」
――”こだわり”ではなくて”気を配るところ”というのがいいですね。中村さんの考えが福井さんとのラフな会話の中にも表れている気がします。質問に戻ると、最初から最後まで見守る・伴走する設計者の在り方の良さは、自分が設計者として気を配るところをとことん突き詰められる仕事がしたいし、それは分業じゃなくて全部自分でやってこそ立ち上がるものだ、ということですね。
福井「そうなんです、独創性を極めるとか、アイコンとなるものを作るために一人で決断したいというわけではなくて、最初から最後まで伴走することで現れる"地味の中にある味"があると思いますし、そういう仕事がしたいです。伊礼設計室で向き合っていたことはまさにそういうことでした。」
――『福井典子の家』にも通ずるところがありますね。
福井「ですです!”あたりまえを磨く滋味深い家”というコンセプトはまさにそれだと思います。」
(つづく)
本インタビューの語りでである福井典子の設計する
『福井典子の家』ーあたりまえを磨く滋味深い家ー
のWEBサイトを公開しております。ぜひご覧ください。設計のご相談・ご依頼お待ちしております。
https://fukuinoriko.archiroid.com/