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花かんむりの魔女 物語集

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架空の島、エルデ島北東岸の小さな町で暮らす、 花かんむりの魔女とその周囲の人々のお話。
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#小説

雨上がりの虹色

雨上がりの虹色

 夏の前、この辺りでは頻繁に、激しい雨を降らせる雨雲が、東の海からやってくる。
 短時間、強い風と明るい雨をもたらして、通り抜けた後はあっという間に晴れ間が戻るのだ。

 雨宿りのお客様を見送ったマリは、開いたドアから庇を見上げた。
 午後の日差しに雨雫がきらめき、洗われた草木は一層冴えた色をしている。妹と作った虹色の窓飾りもよく映えた。

 通りの向こうを眺めると、学校から帰宅する妹が、大通りを

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薔薇色曹達水

薔薇色曹達水

 吹く風がふわりとあたたかく、甘やかな花の香気を含む季節。

 紅茶店『マーシュマロウ』で、昨秋から働き始めたマリは、一番下の妹と、硝子でできたドリンクサーバーをテーブルに運ぶ。

 冷やした鉱泉水と氷、それから薔薇の花が踊る、淡いピンクの曹達水。
 注いだグラスにも、ひとひらの花弁が浮かべられ、淡い香りを漂わせていた。

「おじいちゃんの薔薇、今年も綺麗に咲かせたね」
 曹達水の中で揺れる花を眺

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春の戴冠

春の戴冠

「ねえ、マリ。春のお祭りの衣装はできた?」
 幼馴染がテーブル越しに身を乗り出した。
もうここ最近、女の子たちの話題といったら、自分達の着るお祭り衣装のことと、男の子たちとのダンス。
それから今年の『春の精』に選ばれる女の子はどんなに美しい衣装を着るのだろうってことだ。

 『春の精』は、春祭りの主役で、街の女の子たちの中から選ばれる。一人の時もあるし、複数人の時もある。
 特別な白い衣装を身につ

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薬草魔女ココの店

薬草魔女ココの店

此処は薬草魔女ココの店。
柳の枝にカラスの吊り看板は、彼女のお婆さんの代から受け継がれています。

お店の前の木陰には気持ちのいいベンチが置かれており、
通りがかりの人々が休憩をしたり、薬草茶を楽しんだりしてゆきます。

扉の横に架けられた箒は、薬草魔女の店を表す符号であり、
朝の掃除にも使用される実用品なのです。

『花かんむりの魔女』より

撮影:Arcana-cica
ドール造形:bluef

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夏色薄荷曹達水

夏色薄荷曹達水

 ペパーミントとニワトコのシロップを、
冷たい鉱泉水で割った飲み物を、僕たちは
夏色曹達水と呼ぶ。

 今日も、さんざめく木漏れ日の下、海色の
硝子杯を手に庭へ降りてくる君を待ちながら、
僕は井戸の底から曹達水の壜を引き上げた。

植物学者Niu氏の手記より

【作品情報】
2020年制作
ミニチュア文具セット「PEPPERMINT」
セット内容 
*羽ペン「夏色曹達水」
*ボトル入インク「夏海」

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栗の渋皮煮

栗の渋皮煮

下茹でした栗の鬼皮を剥き、
重曹を入れた水で3度茹でこぼす。

1回目の濃い赤色をした茹で汁は、染色用の鍋によけた。
これを使って後日、
白の毛糸を、美しい薄紅色に染めるのだ。

茹でた栗の渋皮から、綺麗に繊維を洗い落とし、
砂糖を加えてゆっくりと煮含める。
数日がかりでつくる栗の渋皮煮は、
来年一年かけて味わうための、大切な一品。

刻んだ栗を、たっぷりのシロップと焼き込んだパウンドケーキは、旦

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