「ねえ、マリ。春のお祭りの衣装はできた？」
幼馴染がテーブル越しに身を乗り出した。
もうここ最近、女の子たちの話題といったら、自分達の着るお祭り衣装のことと、男の子たちとのダンス。
それから今年の『春の精』に選ばれる女の子はどんなに美しい衣装を着るのだろうってことだ。
『春の精』は、春祭りの主役で、街の女の子たちの中から選ばれる。一人の時もあるし、複数人の時もある。
特別な白い衣装を身につけた春の精は、前の年の春の精役から、新しい花の冠を授けられ、その年の豊かな実りを願う祈りを捧げる。
この地方に昔から伝わる伝承を元に始まったお祭りのメインイベント。
マリと友人は前年に春の精を務め終えたので、今年は自分たちの晴着の心配だけをしていればよかった。
今年は隣市で人気のドレス店を営む、マリの従姉たちが春の精の衣装を制作するということで、少女たちの噂話にも熱がこもっている。
「マリと一緒に春の精のドレスを着られたのは嬉しかったけれど、やっぱりあたしはお祭りで楽しく遊びたいわ」
気楽に笑って紅茶を飲む幼馴染に、マリは笑って頷きを返した。
【作品情報】
2021年制作
ドレスセット 『春の戴冠』
*キャリングブランケットセット
*ラリエットセット
制作:ドレス制作 天使匣
ブランケット、ラリエット Arcana-cica（アルカナキカ）
撮影:Arcana-cica
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