読書感想文(182)夏目漱石『行人』
はじめに
こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。
今回は夏目漱石の後期三部作の第二作目です。
感想
面白かったです。
特にいいなと思ったのは、最後の「塵労」の章です。その冒頭部がとても気に入りました。
特に最後の一文がいいなと思いました。
逆に言えば、呼吸をする度に春の匂が脈の中に流れ込む快よさを忘れてしまうと、それは老いた証です。
いつまでも春を感じられる若さを持っていたいです。
この作品は二郎の視点で語られますが、話の中心はその兄である一郎です。二郎は『猫』における猫、『彼岸過迄』における敬太郎のような立ち位置です。
話の中心となる兄は次第に家族から疎まれますが、共感するところやいいなと思うところもありました。
周りに流されずに自分の正義を貫く所はいいなと思いました。自分が辛いからといって都合良く変えないところがいいなと思いました。
これは昔随分悩みましたが、最近はあまり考えないようになりました。
なぜかはわかりません。
最近もある意味目的は無いように思いますが、そこを肯定しているような気がします。
というのも、偶然性を多く持つ人生を楽しむことができているからです。
何か目的を定めると、目的への道に沿うような力が働きます。それによって、人生の幅が狭まってしまってしまいます。
最近はより良く生きようとすると様々な情報が手に入りますが、それでもどうもみんな同じような方向(例えば経済的な幸福)に向かっているようで面白くないなと思います。そこから逃れたいのかもしれません。多分、進撃の巨人に近いような気がします。
これは夏目漱石の他の作品にもあったように思います。
そこでは、不義は命の終わりを以て受け入れられる、といったような事が書かれていたような気がします。
私はこれについてはその通りであると考えた上で、だからこそ自然が醸した恋愛を元に、世間体に合わせて夫婦という関係を結ぶのが穏当なのではないかと思っています。
余談ですが、坂口安吾が、戒めるのは戒めなければ皆それをやるからだ、即ち皆が本当にやりたいことなのだ、といったようなことを書いていたのを思い出しました。
おわりに
今回、実は読み終えてから感想を書くまでに結構間が空いてしまいました。
なので思い出しながら書いたのですが、やっぱり「塵労」が印象に残っていました。
この作品は分厚いので読み直すのに気力が必要ですが、断片的にでもいいからまた読み返したいなと思いました。
ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。
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