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再考
1人でずっと紡いできた言葉は誰の心にも届かなかった.春、別れと出会の季節.僕とは無縁の季節.桜の花びらが散るのをあの子と見る.ふらふら揺れる花びらはそこだけ時間が歪んでいるみたいだ.薄紅色に染まった花びら.あいつらはどんなふうに見えるのかな.夏、新緑と生命の飽和.ただ繁殖する事だけを目的とした季節.どこまでも尽きない体力との闘争.明日を望まぬ夏休み.夕焼け空と君の面影.揺れる陽炎.もう訪れる事のない「また、明日」.あぁ、きっと夏はまた来る.秋、衰退と豊作.日々早くなる時間と黄色い雪の季節.自分の衰えには気づかない.誰も知らない.今までのあなたが消えてしまっていた.夏の引力によって.
食物の収穫と共に散る秋葉(あきは)や十六月(いざよいづき).冬、孤独と努力.そして我慢、辛抱、忍耐.葉が枯れ、誰彼構わず消えてゆく季節.いや、始めから独りではあった.ずっと幻影を見ていただけだった.誰かに写っているだろう自分を想像していただけだ.冬の朝焼け空はいつも同じグレースケール.春も夏も秋もいつもそうだった.色の混ざり合った灰色.苦しみも悲しみも孤独も全部詰まった黒と少しの希望の白が混ざり合った色.