道に落ちていた二重人格|#毎週ショートショートnote |1分
「非常に申し上げにくいのですが、結果は『こんな奴で大丈夫なのか?』、『結婚を止めておけばよかった』と出ました」
その感拾師の回答は意外なものだった。
人間誰もがその時々に特定の感情を持ち、その場所に落としていくものだ。最近話題の感拾師の仕事は、こうした感情を拾い上げ、依頼主に伝達することである。
私の父は生前、あまり感情を表に出さず、私からの結婚報告を受けても何も言ってくれなかった。その父が亡くなった今、彼が私の結婚をどう感じていたのか確認したくなり、私は感拾師をここに連れてきた。そして、あの幸せな結婚式の日に、父と一緒に歩いた、このバージンロードに落とされた感情を拾い上げるようお願いしたのだった。
「ありがとうございます。意外でしたが、生前の父の気持ちが分かりました」
「……お伝えした感情はお父様のものではありません」
「は? それじゃあ、誰の感情ですか?」
「……あなたの旦那様です」
たらはかに(田原にか)さんの上記企画に参加させていただきました。