生成AI活用への鍵は、グロースマインドセット
Key Takeaways
AIの力を活用するために、グロース(成長)マインドセットを養おう
AIの進歩は、実験し、成功と失敗の両方に学ぶことから始まる
AI導入の課題には、考え方のシフト、最適なアプリケーションの特定、知識の構築、最新情報のキャッチアップが含まれる
AIの能力と限界を理解し、探求するオープンな姿勢を育むことで、AI導入に利益をもたらす
AIが浸透しプロセスを高速化するにつれて、デザインの仕事の役割とスキルセットが再構築されるだろう
AIを導入するデザインチームは、スモールスタートでリーダーの賛同を獲得し、学習を継続しておこなおう
エイクエントは昨年来、文章、画像、動画プラットフォームにわたる生成AIの進化を注意深く観察してきました。私たちのクリエイティブチームの旅は、CEOのジョン H. チュアンの持つ根っからの好奇心から始まり、デザイン、クリエイティブ、マーケティングの仕事の世界にAIが持つ革新的な可能性を認識するにつれて、急速に深い関心へと発展していきました。 AIの飛躍的な発展ペースと能力は、私たちに絶え間ない実験と学習を強いるものであり、私たちは常に気を抜かず継続的に実験と学習を続けています。
今日、AIは私たちにとって単なる一時的な関心事ではなく、私たちのクリエイティブプロセスやワークフローの一部となり、強力な成果を生み出すために活用するようになりました。私たちの経験から、AIテクノロジーはAdobe Creative Suite (これもAIを利用しています) のように、クリエイティブチームやデザインチームが仕事に活用できるツールであり、人に取って代わるのではなく、仕事をよりよく遂行するために彼らの能力を高めるものであると確信しています。他の新しいテクノロジーと同様に、新しいスキルや専門知識を開発する上で最も重要な要素の1つは、グロースマインドセットを持つことです。
このブログでは、私たちのAIへの取り組みをさらに深く掘り下げ、エイクエントでのAIの使用方法に焦点を当て、組織/会社/ビジネスでAIを導入するためのグロースマインドセットをどのように育成できるかについてのインサイトを提供します。
AIツールをクリエイティブおよびデザインのワークフローに組み込む
エイクエントでは、AIの多彩なパワーを活用することで、クリエイティブ・ジャーニー全体にわたるワークフローに、このテクノロジーを慎重に組み込んでいます。コンセプトから実行に至るまで、AIツールは私たちのプロセスに不可欠な一部となり、創造性と効率性の両方を高めています。
AIによるテキスト生成
ChatGPTなどのAIツールを統合し、アイデアの創出、イテレーション、プロンプト開発など、さまざまなコンセプトに関わる活動に活用しています。
コンセプトレベルでの活動:ブレーンストーミング段階でAIを利用してアイデアを相互参照し、ありきたりで陳腐と見なされかねないアイデアのパターンを認識します。良いアイデアが見つかったら、AIはそれをさらに発展させ、より高い次元、または新しい方向へと導くバリエーションや代替案を作成するのにも役立ちます。
ただし、私たちはこうしたツールだけに頼ってアイデアを生み出しているわけではありません。私たちは、人間の知的でクリエイティブな可能性を信じています。最もユニークで、戦略的で、賢いアイデアはここから生まれます。ライティングのイテレーション(反復繰り返し): ライターのツールとして、AIは複雑な段落を言い換えたりするのに便利です。代替のタイトルや見出しの作成、および A/B テストにも役立ちます。AIにコピーを渡すと、コンテンツの創造性と多様性を高めてくれることもあります。
ただし、倫理的視点に基づいて、私たちはライティングをAIに任せきりにすることはありません。それも人間の仕事だと私たちは考えています。プロンプト開発:画像生成のためのプロンプトの開発にもAIを採用しています。これらのプロンプトは、ChatGPTによって作成されることが多く、従来の枠を超え、私たちの創造的な限界に挑戦するものです。次に、これらのプロンプトをMidjourneyなどの別のツールで使用して、画像を生成します。幅広いクリエイティブな領域を確実に探求するために、私たちはAIで生成されたプロンプトと手動で作成されたプロンプトをテストすることがよくあります。多くの場合、それらは最終的に融合され、その後実験され、さらに改良されます。
AIによる画像生成
画像生成にはDALL-EやMidjourney、画像編集・改良・制作には Adobe Fireflyなどのツールを取り入れています。これらのツールは、アイデア創出のような概念的な活動と、画像作成・反復・操作などの実行的な活動の両方をサポートしてくれます。
アイデア創出: AIを活用した画像生成ツールは、大きなアイデアのブレインストーミングなど、コンセプトワークに関連するビジュアルを迅速に発展させるのに役立ちます。ここでの真の力は、「もしも」のアイデアを迅速に生成し、探索するAIの能力です。これらのツールを使用すると、スケッチ、ストーリーボードの作成、収集したスワイプ画像やストック画像からのムードボードといった従来の方法と比較して、アイデアのコンセプト化においてユニークなアプローチを提供でき、可能性を即座に視覚化することが可能になります。
画像作成:コンセプトが適切であれば、同じ画像生成ツールを使用して、エイクエントのクリエイティブおよびマーケティング業務で直接使用される画像を作成するためにも活用されます。AIで生成された画像の品質、解像度、可能性は、今年に入り大幅に向上しており、デザインとクリエイティブの領域で大きな競争相手となっています。
AIツールを使用して画像を生成するには、企業やブランドとクリエイターの両方が合法性、倫理性、テクノロジーの適切な使用に留意する必要があることに注意することが重要です。なぜならAIは、知的財産を含む、Web上で利用可能なあらゆるものについてトレーニングされているからです。そして、私たちがこれまで見てきたように、AIはディープフェイクの作成、著作権で保護された素材の侵害、アーティストやイラストレーターのスタイルを模倣したりするために使用される可能性があります。エイクエントでは、組織としての視点とプロセスを反映させるために、配慮を持ってAIツールの使用に取り組んでいます。
私たちは、著作権を故意に侵害するような作品の制作をAIに依頼することはありません。私たちはAIに、アーティストやイラストレーターのスタイルを模倣したり、複製したり、コピーしたりすることを求めません。また、プロンプトエンジニアリング(AIから最適な答えを出力するようなプロンプトを開発するプロセス)では、アーティストの名前や作品名を使用しません。私たちは、 Midjourneyに対する訴訟が迫っていること、およびアーティストの名前がプラットフォーム内で見つけて使用できることも認識しています。
私たちはこのニュースを憂慮すべきだと考えており、このように考えています:ブランド作品に特定のアーティストのスタイルを取り入れたい場合は、真似をするのではなく、そのアーティストに依頼し、そのアーティストへ対価を支払うこと。私たちが生成する画像は、「月がのぼる海に浮かぶヨット」のような主題の説明と、「水彩を使った鉛筆スケッチ」のようなスタイルの説明を組み合わせたプロンプトから作成されています。
AIが創造性と効率性を強化
AI が私たちの創造性(クリエイティビティ)の可能性を大幅に高めた最も注目すべき事例の1つは、昨年、当社のTalent Insightsレポート「チームワークのルネッサンス」というコンセプトの開発中にありました。私たちは、14世紀の名画のエッセンスを現代風にアレンジした一連の油絵を制作することを目指しました(注:ルネサンス絵画 (再生、復活) と、PCやVRゴーグル (現代のテクノロジーを使って働く人たち)を組み合わせたイメージ)。
また、ルネサンス絵画はパブリック・ドメインであるため、特定のスタイルをAIを駆使して作り上げることができました。このコンセプトは、アイデアとそれを実現するAIの可能性の間に見出された相乗効果によって、適切な方法で活用する良い例となりました。
従来のシナリオでは、私たちのコンセプトを実現するには時間とコストがかかり、合理的に実現することはできなかったでしょう。しかし、生成AIにより、わずかな時間とコストでビジョンを達成することができました。広範な実験を通じて、私たちはAIが私たちの思い描く一貫した結果を生み出すよう指示するプロンプトを作成しました。結果は?見事にダヴィンチやミケランジェロの作品のような、明暗法がふんだんに盛り込まれたルネサンス風の絵画が完成しました。これは私たちにとって転機となり、デザインの創造性と効率性を高めるAIの計り知れない可能性を感じさせてくれました。
AIが私たちの創造的な可能性を高めるもう1つの例は、エイクエントのブログです。MidjourneyなどのAIツールを使用して、ソートリーダーシップ(Thought Leadership)コンテンツに命を吹き込むダイナミックな画像を作成しています。毎週の配信ペースをサポートするために、私たちは生成画像ツールを使用してアートワークを作成し、多様な題材をさまざまなイラストレーションスタイルで表現しています。私たちのブログをサポートするこの作業により、主題と文体の説明の組み合わせに焦点を当て、プロンプトを継続的にテストし、改良することができています。
AIの可能性を探求し、受け入れ続ける中で、可能性の限界を押し上げることで、より多くの「Wow!」な瞬間を目撃できることを楽しみにしています。
新しいAIテクノロジーを学習し導入する
クリエイティブやデザインにAIを取り入れることには、課題がないわけではありません。考え方の変化から、急速な技術進歩への対応まで、AI統合への道のりは失敗と成功に満ちた困難なものです。多くの場合、コンフォートゾーンから踏み出し、未知の世界に飛び込むことが必要です。ただし、導入を成功させる鍵は、継続的に学習し、実験し、諦めないことにあります。これらのハードルを乗り越えた私たちの実体験を共有することで、プロセスをスムーズに進める方法に光を当てたいと考えています。
考え方を変える: AIを恐れず、受け入れる
私たちが最初に直面した課題の1つは、クリエイティブチームのメンバーが守りの姿勢を取っていることでした。クリエイターの中には、生成AIに脅威を感じ、AIが自分に取って代わると考えている人や、AIを自分の能力を強化して強化するツールではなく競合相手と見なしている人もいることを認識することが重要です。
これらの感情は現実的であり、非常に重要です。そして、透明性をもって議論される必要があります。こうした感情を克服するための鍵は、AIがクリエイティブな可能性とクリエイティブ・デザインチームを置き換えるのではなく、強化するために存在することを強調しながら、新しい可能性に対してのオープンさを奨励する環境を育むことでした。
感情的な障害に打ち勝つことを奨励され、サポートされていなければ、彼らの可能性と能力を高めるためにAIツールを受け入れることが難しくなります。私たちは検討する中で、これらすべてについてオープンで継続的な対話を続けることも重要でした。
適切なアプリケーションの特定
AI をどこにどのように適用するのが最適かを判断することも、私たちが乗り越えなければならないハードルでした。クリエイティブおよびデザインのプロセスのすべての側面でAIの恩恵を受けるわけではないため、AIが最も価値を付加できる場所と、戦略的に最も合理的である場所を特定することが重要です。そのためには、AI が真に能力を発揮してチームをサポートできる最適な環境を見つけるまで、実験、テスト、反復を繰り返す必要がありました。
知識の構築と、限界を理解する
AIが何が得意で、何が苦手なのかを認識することが重要です。これは、現実的な期待値を設定し、AIへの過度の依存を防ぐのに役立ちます。私たちはAIの能力と限界を理解することに時間を費やしました。これにより、AIをツールとして効果的に使用し、チームのスキルを代替するのではなく補完することができました。
急速な進歩に対応
AI技術は猛烈なスピードで進化しているため、新しい機能や特徴に常に対応することは、課題であると同時に必要なことでもあります。この急速な進化に遅れを取らない最善の方法は、特にアップデートや新機能がリリースされるときに、定期的に使用して実験することだと考えました。この実践的なアプローチは、最新の情報を得るのに役立つだけでなく、AIが私たちのクリエイティブなプロセスを向上できる新しい方法を常に模索することを可能にしてくれます。また、業界特有のブログを読んだり、LinkedIn でオピニオンリーダーをフォローしたり、他のクリエイターの提案や成功事例を調べたりすることで、AIの開発と最新のトレンドを常に把握しています。
ガイドラインとガードレールの作成
上述したように、AIをチームや組織全体でどのように使用するかについて、倫理的な視点を持つことが重要です。AIは、技術的スキルと倫理的感覚の両方を必要とする強力なテクノロジーです。チームメンバーが組織にとって有益で、有害ではない方法でツールを使用するためには、ガイドラインを確立し、全員が理解することが重要です。ガイドラインを継続的に見直し、テクノロジーの発展に合わせて進化させることは、企業ブランドとビジネスを守りながらAIの導入を促進するために重要です。私たちはチームメンバーにAIの探索と実験を奨励する一方で、倫理的な使用、適切性、限界についての彼らの視点も重視しています。このフィードバック・ループは、チームとしての基準を維持するために重要です。
AIの可能性を引き出す: 今後の使用と適応
AIを使用すると、デザイナーがアイデアを即座に形にし、素早く反復し、コンセプトの可能性をこれまで以上に早く理解できるようになります。このテクノロジーは「これも試してみよう」という姿勢を育み、発見段階でコンセプトを迅速に検討できるようにします。これは、複数の「もしも」を同時に検討できる追加の手が増えたようなもので、デザイナーはより多くのことを実行し、より多くのことを試し、より多くの発見をすることができます。
実行と生産の強化
AIの影響はコンセプト開発を超えて、デザインの実行と制作にまで浸透しています。 Adobe Creative Suiteなどの従来のツールは、AI機能によって継続的に強化されており、生成画像テクノロジーなどの新しいツールも登場し続けています。これらの進歩により、デザインタスクが簡素化され、業務レベルとタスクレベルの両方で制作が大幅に加速されます。
新しい役割とスキルセットの形成
AIがデザインプロセスの定番となるにつれ、クリエイティブな職務において AIの専門知識がますます一般的に求められるようになります。また、AI技術の活用に特化した新たな仕事の出現も予想されます。このシフトは、AIリテラシーが従来のデザインスキルと同様に基礎となる、デザインの専門領域における重要な進化を意味します。
AI導入に関する最終的な考え
AI導入に乗り出すクリエイティブチームやデザインチームのリーダーへの私たちのアドバイスは単純明快です。「もう待つ必要はありません」。
スモールスタートで、チームとビジネスに合致するものに集中し、学習と人材育成に着手すること。潜在的な法的影響に対処するため、経営幹部チームおよび顧問弁護士との連携を確保すること。 AIに対する組織全体の理解、AIの適用方法、AIがどのように使用されるかを促進することが不可欠です。
AIはクリエイティブとデザインの世界に革命をもたらしています。 AIの探究と実験を続ける中で、私たちは無限の可能性に満ちた未来を予想し、デザインチームにこれまでにないほど新たな発見、実現、達成の力を与えています。
このブログでは、生成AIツールとその潜在的なアプリケーションについて説明しています。これらのテクノロジーは急速に進化しているため、その機能、安全性、セキュリティ、倫理的な使用の観点から、最新の開発状況を調査することをお勧めします。生成AIの責任ある使用の詳細については、ホワイトペーパー「Using Generative AI for Design」をダウンロードしてください(英語)。
筆者について
Andrew MorseはAquentのグローバル エグゼクティブ クリエイティブ ディレクターを務めています。デザイン思考、ブランド・ポジショニング、クリエイティブ・エクセレンスに重点を置き、2019年からエイクエント・ポートフォリオ全体のブランド・デザインとエクスペリエンス・チームを率いています。ブランドのメタバースへの移行やAIテクノロジーのクリエイティブ活用を含む、Aquent、Aquent Studios、および Aquent Talent の再設計を監督してきました。Aquent に入社する前は、大手デジタルエージェンシーに20年間勤務し、アディダス、LEGO、サムスンといった有名ブランドのクリエイティブ・リレーションシップを管理していました。彼の特徴的な仕事は、Effie、Cannes Lions、Webby、W3、Hatchなどの権威ある組織から数多くの賞や栄誉を獲得しています。
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