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AQSim.infoの自己紹介

このたび、北海道大学水産学部発のスタートアップAQSimを母体とし、noteアカウント「AQSim.info」を開設いたしました。

陸上養殖に関わる方々が知っておくべき基礎的な知識、最新の情報をわかりやすく、すぐにアクセスできる情報として随時提供していきます。


ちょっとした違和感。

AQSim.infoは、昨今の陸上養殖業界にある、ちょっとした違和感をキッカケとして構想されました。

陸上養殖の盛り上がりと、その大義

陸上養殖業界はここ10年ほどで盛り上がりを増していると言ってよいでしょう。ネットニュースで検索してもすぐに見えてきます。誰もが知る大企業が新しく参入する。ローカルの企業が新しく参入する。自治体が新しく参入する。個人商店が新しく参入する…。スケール感に幅のある多様な事業者がこれから陸上養殖事業を始めようとしています。実際に事業者数は増加しています。水産庁によると、養殖事業(海面を含む)の事業者数は2010年以降、増加の勢いが増していることが見て取れます。

「令和3年度陸上養殖実態調査委託事業」の結果より抜粋。


一体、新しく参入してくる理由は何なのでしょう。さまざまな記事を調べていくと、スケールは異なれど、およそ似たような記述が見えてきます。

おもなポイントは2つ。

① 水産物を安定かつ環境負荷を抑えて供給する。
 それが天然資源の保護に繋がる。

② 水産物をローカルで育て、ローカルで消費することで、
 ローカルの雇用や経済を活性化させる。

どちらもぜひ達成して欲しいと思える大義です。
水産物を、私たちも、私たちの子世代も、その子世代も、おいしく食べていける世の中であってほしい。それを目指し挑戦する事業者が増えるということは喜ばしいことだと感じられます。応援したい。

陸上養殖の課題はシンプルで困難

一方で、ニュースを眺めているだけでも陸上養殖事業の課題というのは非常にシンプルな形で見えてきます。

「採算が合うか、合わないか。」です。

どれだけ立派な目標を掲げて、応援を得て、愛される事業だったとしても、大きな初期投資に耐える体力と、大きなランニングコストを賄えるだけの収益を上げられなければ持続できないのです。事業として持続できなければ、水産物の供給だって、ローカルへの長期的な貢献だって、もちろん叶わないわけです。

今、どんどん参入している事業者の方々が
これを理解していないはずはない、はず。

理解しているはずですよね?


隠れたコミュニケーションの課題

ここにちょっとした違和感がありました。

1つの事業に関わる事業者は1人じゃない。事業体の中には生産をする養殖業者もいれば、その生産物を流通させる担当者もいれば、設備管理、経理、事業経営者といった多様な役割の人がいます。

事業で達成したい大義を掲げて(あるいは、勢いづく新規参入の流れに乗って)、陸上養殖へ参入しようと決めた人は果たして現場で働く人なのか?
答えがNoという事業体は多いのではないでしょうか。

養殖のノウハウがある、独自の流通ルートを持っている、資本がある、土地がある…といった、事業体独自の強みがあっても、その裏には自分たちの強み以外の部分をサポートしてくれる人材を求めて奔走していたり、関連する大学を出ているという理由で担当者に任命されて必死にもがいていたりする個人がいるのではないでしょうか。

そんな風に、

事業体を1つの塊としてではなく、多様な個人の集まりとして捉えると、コミュニケーションが重要になってくるはず。とりわけ、専門知識のある人とない人との間で"共通言語"をもって話せているかということです。

例えば、
業界外から新規参入してきた経営者と養殖事業をよく知る現場との間で。

両者の間に最低限の前提知識や共通認識がなければどうなるでしょう。コストを抑えたい経営者は魚の生育上不可欠な要素にまでコストカットの手を拡げてしまわないか。逆に現場側にいわれるがままに経営方針と合わないレベルで支出を決断してしまわないか。正しい判断ができる環境から遠のいてしまう可能性があります。

経営と現場の間に前提知識の壁があるはず。


例えば、
生産現場のベテランとルーキーとの間でも。

ベテランから「○○は大事だぞ」「○○に気をつけろ」と教えられても、なぜその指示が重要なのかをルーキーは自分で咀嚼して、納得して理解できなければミスを誘発することになりかねません。とりあえずこれを読んでおけばポイントは抑えられる!という資料の存在が不可欠になるでしょう。

人材育成にはわかりやすい資料が不可欠。

しかしながら、共通言語や前提知識を共有する機会を得るという点において、現状の陸上養殖業界は貧しいように思います。

現状ある選択肢は?

インターネットでは、
ニュースから業界の動向を眺めることができます。今後を期待させるポジティブなニュースが続いたのにしばらくして閉業の知らせが出ていることもしばしば(概ね採算性の問題で)。ただし、なぜ失敗したのか?どこは上手くいっていたのか?詳細な中身の情報はほとんど見えてきません。既存の事業体が各々のノウハウを公開することもめったにありません。それはもちろん、ノウハウが自社の利益を生む財産だからでしょう。

書籍では、
「養殖ビジネス」誌が養殖業界では1強といってよいのではないでしょうか。最新の知見や情報がまとめられた月刊誌として重宝されており、Amazon・楽天等のランキングを見ても明らかです。それ以外にも書籍はありますが、浅く広くな入門書や鈍器のような専門書がチラホラあるだけで、豊富なラインナップとは言えません。

AQSim.infoが担う役割

この、歪ともみえる情報の流れの中に、小さくとも選択肢を1つ加えたい。
それがAQSim.infoのキッカケとなった想いです。

今あるメディアでカバーできないツブ感の情報を届ける。

すなわち、
・基礎的過ぎて聞くのがはばかられるような。
・けれども極めて大切な知識をおさらいしたいような。

そそっとスマホで検索して思い出すように理解しなおせる。陸上養殖事業の中で行われるコミュニケーションをそそっと助けるメディア。AQSim.infoはその温度感からスタートしていきます。

メディアとして成熟する中で、最新知見をまとめてお知らせしたり、養殖現場レポート、インタビューしたりなど、よりリアリティの高い情報も示していきたいと構想しています。

応援したいと思わせてくれた、陸上養殖事業への挑戦者のために。
これからよろしくお願いします。


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