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苛立ちを海へ〜海での私と〜
前編はこちらです
君への苛立ちを自分でうまく逃すため
瞑想で使う手法を試してみることにした
深呼吸をして
「苛立つ気持ち」とラベルを貼って
海に流せばいい
あの海で、幸せに暮らしてる
パラレルワールドの海で暮らす私に
沖まで持って行ってもらうんだ
大変だったね
悲しかったね
辛かったね
許せないね
ひどいね
最低だね
信じられないね
かわいそうだったね
きつかったね
しんどかったね
疲れたでしょ
深呼吸して
泣いていいから
叫んでいいから
海見よう
一緒に
気が済むまで泣いて
「最低な奴」ってラベルも
海に流そう
沖まで持っていくから
見てて!
そう言って海の私は
いくつもの波を超えながら
沖に向かってパドルした
沖に出ると
サーフボードに座り
波に揺られながら
「最低な奴」のラベルと
「苛立つ気持ち」のラベルを
沖で粉々にちぎり
太陽に向け高々とかかげ
海にばら撒いた
苛立つ気持ちと
最低な奴が
粉々になって
キラキラと舞った
オッケー!
健康的な笑顔で
日焼けした顔で
もう大丈夫だよ!
と教えてくれた
傷つき続けてきた私は
しかばねのような
か細い声で
ありがとうと
小さくつぶやいた
砂の温かさが
心地よく
潮風が
優しく包む
おーい!
沖から手を振る海の私
はーい
力なく答える私
少し安心した
苛立つ気持ちのラベルと
最低な奴のラベルは
あまりきれいではない
懐かしくて荒々しいあの海に撒かれた
広大な深い海が
怒りと憎しみを包み込んだ
ほんの小さなチリでしかないね
広くて深いこの海に比べたら
私の怒りなんて
ただのゴミクズだね
そうだよ!
ゴミカスだよ!
ただのゴミクズ!
そう言って笑う海の私は
岸に戻りたての
上がった息で笑った
私の肩を支えて笑った
ゴミカスのゴミクズ!
海の私と私の2人で
海に向かって叫びながら
笑った
波にきたえられた
たくましい腕が
まぶしかった
その視線は
水平線のもっと先の
海の向こうを見つめていた
大丈夫
海での私がここで幸せになってる
だから大丈夫
安心して眠った悲しみの私は
目覚めた時にどこにいるんだろう
赤ちゃんのそばで
赤ちゃんのいいにおいに包まれて
ひだまりのベッドの中
優しく微笑んでいるに違いない
その目にはうっすらと
涙が滲んでいるだろう
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