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父への怒りの、その先へ

威圧感で支配してくる人が許せない



上に立つ者は、人を見下すような発言をすべきではない
むしろ上に立つからこそ、万人を敬う姿勢が大切だ

権力で弱いものを従わせようとすることは間違いだ
力は弱いものを守るために使わなければならない

そう教えられてきた


そのとおりだ

それなのに
なのに父は
威圧的に母を追い詰めて泣かせる
父は悪だ
母を救わなくては
泣いている母を守らなくては

幼い私は
家庭内の不穏をいち早く察知し
必死に母を守るべくして
両親の喧嘩が起こると
必ず父に「ひとこと」述べた
母が一番伝えたいであろう「ひとこと」を

それは時に
「手伝ってあげてよ」だったり
「そういう人をおちょくる言い方はダメだ」だったり
「人を馬鹿にした言い方は間違ってる」だったり

父の威圧的な行動を見つけると
私の頭の中で警告音がなり
私は父へ意見した
堂々と意見した

そうだ
母を救うのだ
泣いてる母を救うのだ


そうして父とは不仲になっていった
父の「人を馬鹿にした態度」に対しては
ほとんど意見した
その言い方はダメだよ!と怒った

小さいころ
私の失敗を見つけては
何度も叩いた父を
許せなかったのかもしれない
父の威圧感は怖かったはずなのに

母を守るという正義を掲げ
父を怒った
勇気を出して父の間違いを指摘した

母を泣かせる父を

父の態度を改めさせる
とすら思っていた

父は晩年病気を患い
急に事故のように死んでしまった
つけ始めていた終活ノートには
姉だけ頼って老後を過ごす計画が残されていた

そしてその終活ノートには
私の名前は一切なかった

それを見たとき
父にとって私は
家族の一員とすら思われていなかったのかと
驚いて泣いた

家族は何があっても家族だと思ってきた

一応、私は父とも家族のつもりでいた

なのに父は、私の存在を
家族から疎外していた


苦しくて辛くて
ずっと悲しい

威圧感で人を従わせるような輩は
今でも絶対に許せない

父を許せないのと同様に
間違いを認めさせてやるとすら
思ってきた


けれども父のその
終活ノートでの仕打ちを知り

とてつもなく悲しかった
悲しくて泣いた


なぜこんなにも
許せないのだろうと
その気持ちと向き合った
どうしても威圧感のある人を許せない
その気持ちと向き合った

生きづらさを抱えたままの私を
楽にしたくて
許せない気持ちと向き合った

母を守るために戦ってきた
許せないという心

許せないという怒りのおかげで
威圧感が恐くて固まってしまっても
私はほとんど「泣かず」に
立ち向かうことができていたことに
気がついた

怒りを感じてきたおかげで
私は「泣かず」に済んできていた
強くいられた

母のようにはならなかった

怒りがあったからこそ「泣かず」に
戦いを挑んでこれたのかもしれない


ふと
「父は降参したのかもしれない」

という考えが頭をよぎった

そうか
父が老後は私に頼ることができないと
思ったのか

私の許せないという気持ちを
しっかりと受け止めていたのか

父に
私の怒りが届いていたんだ
父は私に降参したんだ

そう思うと急に肩の荷が降りた気がして

母のために怒ることが
バカバカしくなった

威圧感を許さないと
戦ってきた怒りは
いったん落ち着いた

肩の力がようやく抜けた

そうか
私の許せないというメッセージは
きちんと父に届いていたんだ

なぜ私に
父を許さないという役目が
課せられたのか
を考えた

権力で弱いものを従わせようとすることに
毅然とした姿勢でNOを言う
それが
これからの社会では必要だから?

だから私は認識を強める機会を得たのか

次の時代へ
古い価値観を
持ち越さないために

私がしっかりとした知識を
得る必要があったのか

世代間の価値観の差を
明白なものとし
新しい価値観で
未来を進めていくために

新たな価値観の未来を
開いていくために






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海野ジュン
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