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【連載】あの人の推し本第4回|鳩野めぐ実さん(出版業、フリーライター)


街ですれちがったあの人、自分とまったく違う仕事をしているあの人、バーで隣に座ったこの人…みんなはどんな本を読み、どんな本に影響されているのだろう? そんな単純な興味から始まった本企画。市井に生きる、さまざまな人におすすめ本を紹介してもらいます。

今回、本を紹介してくれるのは?


今回、推し本を紹介してくださるのは、映像制作や、企業への取材から商品コピーの執筆までと、幅広く創作活動に携わられている鳩野めぐ実さんです。
お仕事がオフの日は「整体→銭湯→中華→本屋に行く→花を買う→パンを買う→シェアサイクルに乗って隣の町に行く …」が、理想の過ごし方だそうですが、最近は体力が落ちたのか途中で力尽きて帰ってきてしまうとか。その気持ち、めっちゃわかります(笑)。

好きなジャンルはエッセイ、小説。普段は書店やAmazon、古本屋で購入することが多く、特に出先でふらっと入る本屋さんでの新たな本との出会いがお好きなんだとか。
紙と電子書籍の使い分けにこだわりはないそうで、電車やお風呂の中、夜中などに突発的に「読みたい!」と思ったら、いつも持ち歩いているKindleで、なんとなく入った本屋さんで出会った本は、紙の本で購入するそうです。

特にお気に入りは、紙・電子両方で買って利便性とコレクター魂の両方を満たしているそうです(すごい)!


鳩野さんのベストセレクション

人生で一番最初に触れた本、ハマった本

人生で最初にハマった本は、『エルマーのぼうけん』シリーズ。エルマー少年とりゅうの子が冒険する物語の3部作です。2022年にはNetflixにてアニメーション映画化もされた不朽の名作です。大人になって久々に調べてみたら、『エルマーのぼうけんすごろく』なんてのも出ているのですね!

墓場まで持っていきたい!宝物の3冊

『ここは退屈迎えに来て』(山内マリ子)

そばにいても離れていても、私の心はいつも君を呼んでいる──。ありふれた地方都市で青春を過ごす、8人の女の子。居場所を探す繊細な心模様を、クールな筆致で鮮やかに描いた傑作連作小説。

幻冬舎サイトより引用

「田舎でくさくさしていた10代のころの気持ちを、ビビッドに思い出させてくれる一冊です。
この本には20歳で出会いました。登場する「地元の女の子」たちのリアルな姿に「ああ私はこんな必死な気持ちで東京(正確には神奈川)に出てきたのだった! このままでは駄目なのだ!」と奮起した思い出。同時に、堕落の一途を辿る生活に絶望し、すがるように読み返した記憶もあります。
30歳となった今、久しぶりに手に取ってみると、10代のくさくさした気持ちだけでなく、20歳の奮起や絶望もこの一冊のなかに収められていることに気づきました。
未だに自意識を持て余す日々ですが、この先一体どうなっていくのか…墓の中で本書片手に答え合わせがしたい」(鳩野さん)


『わたしを空腹にしないほうがいい』(くどうれいん)

これは現代版『ことばの食卓』否『手塩にかけたわたしの料理』か?いいえ、彼女は"くどうれいん"。
モリオカが生んだアンファン・テリブルが書き散らしたことばと食物の記録。 はじまりはこうだ。
"わたしを空腹にしないほうがいい。もういい大人なのにお腹がすくとあからさまにむっとして怒り出したり、突然悲しくなってめそめそしたりしてしまう。昼食に訪れたお店が混んでいると友人が『まずい。鬼が来るぞ』とわたしの顔色を窺ってはらはらしているので、鬼じゃない!と叱る。ほら、もうこうしてすでに怒っている。さらに、お腹がすくとわたしのお腹は強い雷のように鳴ってしまう。しかもときどきは人の言葉のような音で。この間は『東急ハンズ』って言ったんですよ、ほんとうです、信じて”
2016年6月の初夏、そして一年後の2017年6月の心象風景。くどうれいんが綴る、食べることと生きることの記録。

BOOKNERDサイトより引用

「各編、俳句をタイトルに冠したエッセイ集。著者のくどうれいんさんが作ったり出会ったりしたごはんと、ともにある生活の記録。
くどうれいんさんが大学時代に書かれた作品群ですが、どうやら作者は同い年(1994年生)なのだそうです。
私が大学時代、神奈川の狭い部屋で全部駄目になっていたとき、少し離れた場所(仙台&盛岡)で悩んだり泣いたりしながら瑞々しい感性を爆発させていた同い年の作家がいたのだと思うと、時を超えて励まされている気持ちになります。
この本との出会いは社会人になってからのことですが、疲れたとき、悲しいとき、何か綺麗なものに触れたいとき…何度でも読み返したい一冊です。
『さあ、お皿を洗わなければ。明日も明後日も、この先もずっと、わたしがわたしを空腹にしないように』その言葉に、背筋がしゃんと伸びます」(鳩野さん)

『隣りの女』(向田邦子)

人妻の恋の道行を描いた表題作をはじめ、おひとり様の恋心を衝いた「胡桃の部屋」、絶筆「春が来た」他、全5篇を収録した珠玉の短篇

文藝春秋BOOKSサイトより引用

「特別好きなのが、最後に収録されている『春が来た』。1981年に51歳で亡くなった向田邦子さんの絶筆となった短編小説です。
さまざまな別れについて何とも軽やかな筆致で描かれていて、世の中には「爽やかな寂しさ」というものがあるのだなということを、この作品から教わりました。
もういない人のことを思うとき、私はまだ笑顔にはなれない。だけど自分の人生が終わるとき、一服の爽やかさを残していけるものだろうか…こちらもお墓の中で答え合わせがしたいですね」(鳩野さん)


鳩野さんの本棚

鳩野さんの本棚は、腰の高さくらいのものを横に二つ並べて、部屋の間仕切りとしても利用しているそうです。

こちらの部屋からも、あちらの部屋からも本が取れる環境にすることで、いつでも気が向いた時に本に触れられる状態にされているそう。素敵な環境ですね!

本棚の中身には規則性を持たせず、旦那様の本やご自身の本、小説や漫画などさまざまなジャンルをミックスして並べているそう。個人的には、手前のつげ義春コーナーが気になります…!

本企画ではこれからも市井に生きる色々な方の推し本を取材していきます!気にいっていただけた方は、ぜひ下記のSNSをフォローしてみてくださいね~。

取材:井谷麻矢可(出版社アプレミディ)


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