新体制チームの「爆速開発」を振り返りで後押しする 〜象・死んだ魚・嘔吐〜
こんにちは。LayerX バクラク事業部でPdMをしているmichiru_daです。
皆さんはチームでの振り返りがマンネリ化してきた、と感じることはありませんか?
私が所属する開発チームでは、通常はKPTでスプリントの振り返りをしています。今回、とあるきっかけがあり「象、死んだ魚、嘔吐」という振り返り手法を試してみたので、実施の背景から得られた成果まで、詳しくお伝えします。
開発チームに起きたこと
まず、この新しい手法を試した時のチームの状況をお伝えします。
私の所属する開発チームには、専任メンバーが8人います。
プロダクト自体は2021年10月のリリースから2年半以上経ったタイミングとなりますが、今回の振り返りの施策を実施した2024年7月のタイミングでは8人の内訳は以下となっていました。
新入社員の入社や、プロダクトローンチ当初から長く在籍していたメンバーの異動が重なっており、チームの第二創業期が発生していたのです。
なぜ新しい手法を試したのか?
新体制への移行を進めるなかで、全体として以下のような課題感や改善のポイントが生じており、スクラムイベントも再設計を行っていました。
メンバーが入れ替わるタイミングなのでこれまでの運用を見直し、新メンバーが持っている知見を取り入れたい
適切なタイミングでのコミュニケーション・チームレビューを行なうことで、仕様検討や設計、実装をもっと高速化したい
振り返りについても、通常はスプリントごとのKPTによる振り返りを行っていますが、
本当にテコ入れすべきProblemが出し切れているか?
なんとなく雰囲気は良いけど言いたいことが言えているか、わからない
という感覚があったため、「象、死んだ魚、嘔吐」にもトライしてみることにしました。
「象、死んだ魚、嘔吐」とは?
「象、死んだ魚、嘔吐」を行うにあたっては、カケハシさんでEMをされているいくおさんをお招きし、ファシリテーションをしていただきました。
詳細はこちらの記事に記載されていますが、参加者が以下の3つのカテゴリーに沿って意見を出すという手法になります。
「象」:口に出さないけれど全員が知っている真実
「死んだ魚」:早く対処すべき悩みのタネ。放っておくと事態が悪化する。
「嘔吐」:遠慮なく胸の内を話す「ぶっちゃけ」
上記を参考に、当日は以下の流れで進行しました。
各カテゴリーについて象・死んだ魚・嘔吐を付箋に書き出して発表
4-5人のグループでディスカッション
グループ間で結果を共有
印象的なトピック
複数名が付箋に書いていたトピックとしては大きく2つあり、グループにわかれたあともディスカッションが行われました。
1. 雑談が少ない
「以前より雑談が減った」「雑談の機会がない」は、多くのメンバーが挙げたトピックでしたが、ディスカッションの結果実際には課題ではないという結論に至りました。
実際に話してみるとSlackの雑談チャンネルは盛り上がっている、ミーティング中もチャット欄は活発、雑談が減っても特に困っていないなどの意見が出され、チームにとって実は問題ではなさそう、と認識をあわせることができました。
2. 人数の割にアウトプットが出ていないかもしれない
これは「象」として複数挙がったトピックで、
メンバーの入れ替わりが大きかったり、オンボーディング中の新入社員が多い状況のなかで、複数のメンバーが感じていた課題でした。
ディスカッションで明確な結論は出ませんでしたが、後日、「チームとして最速で価値を出すために何の行動を変えるか?」を検討するアクションにつながりました。
参加メンバーの反応や感想
実際にワークに参加したメンバーからも以下のような感想がありました。
良かった点
他のメンバーの思いを知ることができた
コミュニケーションや情報、理解の差を改めて認識できた
外部の人がいることで、ネガティブなことも客観的に見てもらえた
通常のKPTより長時間だったにも関わらず、議論が白熱して時間が足りないほどだった
次回実施するときに気をつけたい点
オフライン参加の方が効果的かもしれない
会の冒頭で「あくまでネクストアクションを出すのが目的ではなく、思いの吐露やチームビルディングが目的」と合意してから始めるとよい
全員が言いたいことを出し切れたわけではないので、ここからがスタート
吐き出すこと自体も大事だが、その後の話し合い・深堀りがチームビルディングには重要
学びや得られたもの
従来の手法と比較して良かったことは、tryがすぐに思いつかないものも話してよい、違和感レベルの課題を「嘔吐」として出せる前提があったため、普段のKPTでは話されない中期的にチーム全体のパフォーマンスに影響しうるイシューについて会話することができた点です。
一方で、イシューの洗い出しだけでなく、少人数でのディスカッションも設けられたため、イシューごとの感覚のすり合わせをチーム内で行うことができたことも、チームの新体制を形成するタイミングで実施できてよかったポイントでした。
さらに「人数の割にアウトプットが足りないかも」の感覚が共有されたことで、ネクストアクションとして、ディスカッションで「このチームのようになりたい」と話にあがった他チームの運用をヒアリングして真似する、no mtgデーを作るなどを積み重ねが行われ、現在ではチーム内/事業部全体向けに動く機能をデモする頻度が増えたり、「開発速度、速いね」と評価されるチームに成長しつつあります。
まとめ
「象、死んだ魚、嘔吐」は、特にチーム構成が変化したタイミングや、従来の振り返りに行き詰まりを感じた際に効果的といわれます。
今回やってみた感想としては、何でも話していい会として実施できるので、様々なバックグラウンドを持つメンバー の目線を改めて合わせるきっかけとなったのがチームビルディング観点でよかったと感じました。
チームの状況や課題に応じて振り返り手法を使い分けることで、普段と異なる切り口や長期の時間軸でのディスカッションができるので、今後も適宜のタイミングでトライしていきたいです。
さいごに
最後に、今回の振り返りをファシリテーションしてくださったいくおさん(弊社に来社された際、LayerXにかけてX JAPANのTシャツを着てきてくださった優しい方です)の著書が出版されています🎉
私も目標づくりが苦手なので読んでみようと思います。皆さんもぜひチェックしてみてください!✌️