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UVERworldに学ぶアドラー心理学1
メッセージ性の強い歌詞が人々の共感を集めているUVERworldの楽曲。恋愛ソングにおける繊細な言葉の表現はもちろんですが、夢を追う若者や自分らしい人生を歩みたいと願う人たちに響く多くの言葉が彼らの楽曲には存在しています。
今回はファンの共感を集める楽曲をいくつか例にとり、自己啓発の源流と呼ばれるアドラーの思想を学んでいこうと思います。
※バンドを知らない方でもお読みいただる内容です。
■ DISC1
僕らが不安に感じるべき事は 自分に何できるか?じゃなく 自分に何が合うか?じゃなく 本当に心が一番選びたいものを選んでるか?ってことだろう【DICIDED】
貴方はこのメッセージをどういった人に向けてのメッセージだと捉えるでしょうか。「自分の本当の気持ちに気付かないふりをしていませんか」と読み取れるこの言葉は、一見すると、本当はやりたいことがあるのに挑戦する前から諦めてしまっている人に向けて、「やりたいことをやろう!」と投げかけている言葉のように思えます。
一方で世の中には、夢や目標を追う途中にあったり、世間から見れば成功していると思われている人であったりするにも関わらず、「成功するためだから仕方がない」のだと無理に自分を納得させている人がいることも忘れてはいけません。
会社のためやお金のため、理由はさまざまあると思いますが、本当はやりたくないと思うことを自分の心を押し殺しながらやり続け、我慢している人というのは、やりたいことを探し求めている人と同じくらいに大勢いるのではないでしょうか。
■ DISC2
他の誰かの正解は君の答えじゃない それぞれの複雑な数式の答えは きっともう君も出てるんだろう【在るべき形】
特に真面目で、聞き分けの良い生き方をしてきた人というのは、自分自身の気持ちよりも他人からの評価や顔色を常に伺い、世間からみた自分というものに囚われすぎる傾向があるように思います。かく言う私自身がそうだったのですが、そういった生き方を選択すると、本当の自分が分からなくなってしまいます。
誰かに認めてもらえなければ自分の存在意義が見出せず、一方で自分の気持ちに反することが世の中に認められると虚しさを覚える。そんな表裏一体の中で生み出される偽りの心と笑顔が、徐々に自分の心を蝕んでいってしまうのです。
そんな自分から抜け出したい、自分を変えたい、自分らしく生きたいと願う人は、きっと私だけではないでしょう。
■ DISC3
一番いけないことはさ自分はダメだと思うこと 誰のせいでもないことを自分のせいにしないで 立ち止まらないで ずるい奴が笑う世界 そう言いながら物事が ゆっくりでも良い方に進むと信じ今日も 正しく生きようとする君は素敵だよ そんな自分を君も愛してあげてよ【一滴の影響】
もちろん、世の中には理不尽なことは多く存在し、その度に絶望を覚えることも多いのも事実です。一生懸命に努力したからといって報われるとは限りません。
本当はこうしたいという信念は常に自分の心に在り続けているはずなのに、その気持ちに蓋をして無理に自分を納得させ、周りからの評価の中で悩み続けるということは、自分で自分を苦しめていることと言えますよね。
私たちはそれを、自信のなさや劣等感という言葉に置き換え、自分を否定的に捉えるようになっていくように思います。
そんな状態を、アドラーは「劣等コンプレックス」という言葉で言い表しています。
『他人から評価を得られず思い悩む場合、私たちは、理想に到達できていない自分に対し、まるで劣っているかのような感覚を抱いてしまうが、それは本来何の因果関係のないところに、あたかも重要な因果関係があるかのように自らを説得し、納得させている見せかけの因果関係である』とアドラーは言います。
つまり健全な劣等感とは、他者との比較の中で生まれるものではなく、「理想の自分」との比較の中で生まれるものであるというのです。
私たちが普段抱えているそれは、自らの劣等感をある種の言い訳に使い始めた「劣等コンプレックス」にほかならず、いろいろ不満があったとしても、「このままのわたし」でいることのほうが楽であり、安心だからそうしているだけで、いまのあなたが不幸なのは、自らの手で「不幸であること」を選んだからである、というのがアドラーの主張なわけです。
厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、確かに本当の自分の気持ちに嘘をついて「〇〇があるからこれができない」という言い訳をし続けているのは、「このままのわたしでいる」ことを自分自身で納得させ続けている状態にあると言えますよね。
誰に期待されなくていい 誰もがあなたの未来に絶望を抱いていたとしても 構わず進んでいけばいい 恐れないで何もかも 君自身が終わらせるかどうかだろう 在るべき形を 【在るべき形】
私はまさにこの歌詞が、アドラーの言うところの「健全な劣等感」を感じて生きていくということを表しているのだと思っています。
他人の幸せの形は自分の幸せの形と同じである訳がありません。自分自身の気持ちや生き方、幸せの形というのは、他の誰でもなく貴方自身が決めるべきであって、他人と比べるのではなく、自分が理想の自分と今の自分を比較して前に進んでいくことが大切なのです。
■ DISC4
そして忘れてはならないのは、その時にどんな選択をしたとしても、私たちはいつでも選びなおすことができる世界の中で生きているということ。
アドラーはこのことについて、今の自分より前に進もうとすることに価値があるとも述べているのですが、TAKUYA∞さんの書く歌詞は、そうやって前に進んでいこうとする私たちの背中をそっと押してくれます。
いつだって世界の中心は 今立つその場所 その世界の広さを決めるのはお前自身 道に迷えば始める冒険 行こう 起きても覚めぬ夢の中へ【IMPACT】
What’s in TOKYOのインタビュー記事で、TAKUYA∞さんはこういう話をしています。「この世の中、何かに屈していかなきゃいけない生き方もあるじゃないですか。でも、それはその人が自分で選んだ道だったら、僕は全然いいと思うんです。ただ、僕自身は自分を曲げずに進んでいける自由、そういう強さが欲しい。」
己と向き合ったうえでの彼のこの覚悟が、彼自身が幸せだと言える生き方に繋がっている気がします。
■ DISC5
その幸せは誰に勝つためじゃなくていい 僕らの笑う理由は誰を見返すためじゃなくていい【I LOVE THE WORLD】
アドラーの唱えた思想は、他者を変えるための心理学ではなく自分が変わっていくための心理学だと言われています。そしてTAKUYA∞さんの綴る言葉もまた、音楽という世界の中で、私たちが変わるためのきっかけを与え続けてくれているのだと私は思います。
自分の幸せの為に、自分が幸せだと思う生き方をする。私は、彼ら両者の思想の中心には常に「自分自身」を軸にした生き方というものが存在しているように感じます。
色あせぬ願いを届けと歌うけど それを聞いて自分を変えるのは君なんだ 自分を変えるのは君だから 明日はきっと変わるから【オトノハ】
■ DISC6
最後に、【7日目の決意】という楽曲を紹介します。成虫となったら1週間しか生きられないと言われるセミに焦点を当て、今回読んでいただいた内容をぎゅっと凝縮したような歌詞が綴られています。
私たちの生き方にそっと寄り添ってくれるこの1曲。彼らの楽曲を聴いたことがない人も、それぞれの感覚と心で是非一度聴いてみていただけたらと思います。
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参考文献:岸見一郎,古賀史健共著 嫌われる勇気
UVERworldに学ぶアドラー心理学2はこちらから。
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