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その気持ちを、人はそれでも愛と呼ぶ

テレビ画面に向き合うこと3分。

私はポロポロと溢れ出る涙を拭いながら、自分の感情移入力と涙脆さに呆れ返っていました。2022年に話題となったドラマ「silent」の最終回。

もともと、こういったドラマは観ないことが多い私ですが(涙腺が崩壊してメンタルに響くことが分かっているので)、周りの複数人から勧められ、意を決してドラマの視聴を始めたのです。

1話〜3話は見逃し放送で、続きはアプリの無料トライアルを利用して、6話(もしくは7話)までを一気に視聴。想像以上に繊細につくられた演出に加え、登場人物一人ひとりに共感を覚えることも多く、視聴開始早々から感情が迷子状態に。その結果、私の涙腺とメンタルはオーバーヒート寸前になってしまったのでした。

これはよくないぞ、と思った私はすぐに、大好きなドラマ『リッチマン・プアウーマン』の視聴を開始。小栗旬さん演じる日向徹に一瞬でメロメロになって、さらに石原さとみさんの笑顔に癒されまくることで、なんとか心のバランスを保ちました。

これに懲りた私は、一気に視聴するのは厳禁!と、毎週リアルタイムでドラマを視聴。繊細な演出や絶妙なタイミングで流れる「subtitle」もドラマを楽しむ要素となり、無事に最後まで素敵なドラマを見届けることができました(そして冒頭に戻る…笑)。

「silent」に「リッチマン・プアウーマン」

全く違うジャンルのドラマですが、2つのドラマに共通している点を挙げるとすれば、女性が男性の心の壁を優しく壊していくというところ。

相手を信じ、一生懸命に相手と向き合って支えていく。その道のりは、決して楽しいことばかりではないけれど、そうやって向き合いたいと思える存在がいることに、少しの羨ましさを抱かずにはいられません。

責任を感じるから、自分のためにその人間が必要だから、その人が悲しいことが嫌だから。そうやって、『自分のため』の気持ちで結びつき、相手に執着する。その気持ちを、人はそれでも愛と呼ぶんです
僕のメジャースプーン / 辻村深月
◇あらすじ◇
平穏な学校生活。同級生のなかでも少し大人びた性格のふみちゃん。そんなふみちゃんはぼくの憧れの存在でもあった。四年生になったある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失ってしまう。犯人に対してぼくだけにできることがある。たった1度のチャンスに向け、彼女のため、ぼくは闘うことを決める。

相手が今何に悩んで、どんな言葉をかけてほしいのか。良かれと思って掛けた言葉を相手がどう受け取るのか。いくら相手のことを理解しているつもりでも、結局、相手の気持ちは、その相手にしか分かりません。

この小説では「言葉」を通し、自分又は誰かの気持ちと向き合うことを軸として物語が展開されていきます。物語を通して「ぼく」と「ふみちゃん」を見ていると、目に見えないものを信じ続けることはとても難しいことなのだと、改めて思わされました。

同じ言葉を投げ掛けても、その言葉が響く相手とそうでない相手がいるように、時にはきっと、誰かの気持ちや言葉を重荷に感じたり、感じさせてしまったりすることもある。そう思うと、何かに向き合うということは、とても難しくて、なんだか虚しいことのようにも感じてしまいます。

それでも、向き合うことをやめなければ、その「相手を想う気持ち」は、いつか相手に伝わるものなのでしょう。お互いがお互いを想い合っていることが「信じ合う」ということに繋がるとするならば、お互いに信じ合えるということは、すごく尊いことだなと感じたりもしました。

ただ言葉を交わすだけじゃなくて、相手と心を通わせること。小説の言葉を借りるとするならば、人はそれを「愛」と呼ぶのかもしれませんね。

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