戦略コンサルタントが駆使する3つの仮説思考
戦略コンサルタントのアップルです。
今回は仮説思考について書きます。仮説思考は、論点思考と並ぶ戦略コンサルタントの武器の柱です。仮説思考には3つの種類があって、それらを三位一体で使うことが大事だという話をします。仕事や業務で仮説思考を使う必要性がある方はぜひご覧ください!
仮説思考はなぜ重要なのか?
仮説とは、何かしら答えを出さないといけないことに対する現時点での答えの見立てです。
仮説なので当然間違っている可能性もあります。仮説を検証していく中で、仮説が修正されたり、仮説が進化したりし、答えへと近づいていきます。
なぜ仮説を持たないといけないかと言えば、何らかその時点での仮説をもたないとアクションがとりづらいからです。例えば、クライアントにとっての事業機会を探索しているとしましょう。「おそらくこの辺に事業機会があるんじゃないか」という仮説を立てないと、何を調査したらよいのか、誰にインタビューをすればよいのかすらフォーカスが定まりません。
一旦「えいや!」で仮説を立てることによって、ひとまずアクションが切れるわけです。「この辺に事業機会がありそう」という仮説は、実際に調査やインタビューをしてみた結果、外れるかもしれません。でもそれでよいのです。その場合は、「なんでこの辺に事業機会があると思ったのに実際はなかったのか?」「ここにないとすれば、じゃあこっちか?」という考察や思考が走り始め、仮説が修正・進化されていくわけです。次に取るべきアクションも明確になります。
「アクションをとるために、仮説を持つことが重要」
仮説思考の重要性はこれに尽きるとアップルは考えています。
3つの仮説思考
仮説思考というのは「対象」と常にセットです。戦略コンサルタントは仮説思考を3つの対象に当てはめます。
・論点
・アプローチ
・答え
つまり、論点仮説、アプローチ仮説、答え仮説の3つを常に考えています。図解すると以下のイメージです。
「え、仮説思考って一つじゃないの?」と思った方もおられるかもしれません。仮説思考について論じた本はたくさんありますが、仮説思考に3種類あるという整理はあまり見かけたことはないからです。
どういうことかというと、多くの書物に書いてある仮説思考とは、3つのうちの答え仮説のことを大体指しています。答えというのは直面するお題(=論点)に対する答えですが、その答えの仮説を立てることが答え仮説です。これはこれでもちろん大事です。
一方で、問題解決や戦略策定をスピーディーに進めるためには、論点仮説とアプローチ仮説も常に持ち続けなければなりません。
論点仮説とは「おそらくこの論点が検討すべき重要論点であろう」という見立てです。戦略コンサルタントは、非常に難易度の高いお題をクライアントから与えられたり提案したりするので、まずそれを論点にかみ砕く必要があります。そのときに、おそらくこれが重要論点だろうということを考えるのです。
かつて、安宅氏(元マッキンゼー)が書いた「イシューからはじめよ」という本がヒットしましたが、イシューが何かを考えるのが論点仮説といってもよいでしょう。
ポイントは、論点仮説もあくまで仮説なので、検討を重ねていく中で進化するということです。戦略コンサルティングのプロジェクトであれば、プロジェクト開始当初に想定していた重要論点が、検討を重ねていく中で変わっていくことが多々あります。「こっちが論点じゃなくて、あっちが論点だったな」ということが検討を重ねていく中で見えてくるわけです。
何かの検討に向き合うときには、漠然と検討に着手するのではなく、まず論点仮説もった上でフォーカスを絞りながら検討を進めることがとても大事です。
もうひとつのアプローチ仮説は、平たく言うと「解法の仮説」です。中高生時代に数学の問題を解くとき、「この問題はこの公式を当てはめると解けそうだ」とか「この問題はこういう切り口を使うと解けそうだ」ということを考えたと思います。これと似たような感じで、「この論点はこういう料理の仕方をすれば答えが出そうだな」という仮説を持つことがアプローチ仮説です。
例えば「パソコン部品メーカーの業界構造の現状はどうなっていて、今後どう変化するのか?」という論点を与えられたとしましょう。この論点に答えを出すためには、机上調査も当然するでしょうし、机上調査だけではわからない部分についてはしかるべき人にインタビューする必要もあるでしょう。特に「今後の変化はどうなるのか?」については、必ずしも市場レポートには十分なレベルで書かれていないので、インタビューが必須になるはずです。
・どういうレポートや書籍を購入すれば業界構造がラフに概観できるか?
・どういうフレームワークで業界構造を整理するとしっくりくるか?
・インタビューは誰にするのが良いのか?
・上記をどういう順番でやっていくのが効率的か?
こういうことを考えるのがアプローチ仮説になります。これもあくまで仮説なので、実際に動く中で修正をかけるべき部分があれば柔軟に修正をかけていくことが大事になります。
アプローチ仮説を立てることの重要性については、以前別の記事で論じました。抽象的なお題を料理するための解法の設計力というのは、戦略コンサルタントに限らずビジネスパーソンにとって重要な能力になりつつあると感じています。
3つの仮説思考のうち、どれが大事なのか?
このように仮説思考には3つあるといわれると、「じゃあ、どれが一番大事なんだ?」と気になる人もいるかもしれません。3つの仮説思考は三位一体なのですべて重要だし3つの仮説思考のバランス感が大事というのがアップルの回答になりますが、あえて言えば「論点仮説」が最も大事だと思います。
なぜかというと、論点設定がすべての起点だからです。論点が設定されて初めてアプローチ仮説が立てられる。論点が設定されて初めて答え仮説が立てられる。こういう関係にあるため、論点が根っこにあります。
論点仮説力が弱いと、そもそも解くべきお題を間違えることになります。早稲田の受験対策をしないといけないのに間違えて慶応の過去問ばっかり解いていたようなものです。これをやってしまうと、間違った論点の検討に投下した時間や工数が完全に無駄になるのでクリティカルです。戦略コンサルティングのプロジェクトでこれをやってしまうと、プロジェクト炎上の火種になります。
まとめ
さて、今回の記事のポイントをまとめましょう。
・仮説を立てることはアクションを切るために重要
・仮説には論点仮説、アプローチ仮説、答え仮説の3つがある。多くの本に書いてある仮説思考は答え仮説のこと
・3つの仮説思考は三位一体だが、あえて言えば論点仮説力が最も重要。なぜならこれが根っこにあるから
続編は以下になります。
3つの仮説思考に加え、クライアントとのコミュニケーションの段階において2つの仮説思考があるというお話をしています。ご興味ある方は引き続きどうぞ!