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コンサルティングの4つのマネタイズ手法
戦略コンサルタントのアップルです。
今回は、戦略コンサルティングを含むコンサルティングファームが、コンサルティングサービスをどうやってマネタイズしているのか(お客さんに何を拠り所に高いフィーを支払っていただくのか)ということを紹介してみたいと思います。
「お金を儲けるとはどういうことか」ということを考えるヒントにもなると思いますので、ぜひご覧ください!
はじめに:ビジネスモデルとは?
マネタイズの話に入る前に、そもそもビジネスモデルとは何かということをおさらいしておきたいと思います。
アップルは戦略コンサルティングの仕事を通じてクライアントとビジネスモデルを一緒に検討することが多くあります。ビジネスモデルという言葉は人によって定義は異なりますが、一番わかりやすくてしっくり来ているのが、以下の4要素がもれなく揃ったものがビジネスモデルであるという定義です。
・誰に(顧客)
・何を(提供価値)
・どうやって(価値の届け方)
・どうやってお金を(マネタイズ)
これについては以前、実践的ビジネスモデルの作り方と題した記事の中で論じさせていただきましたので、詳しくは以下の記事をご覧ください。
この中で最も知恵を絞らないといけないのがマネタイズです。誰に、何を、どうやってが定義できたとしても、お金が儲けられなければビジネスは成立しません。
つまり、誰かに解決したい課題があっても、それにお金が伴わなければビジネスにはならないです。お金にならない誰かの課題を解決するのは、慈善事業や行政の役割ということになります。
戦略コンサルティングの仕事も同様です。どんな会社も経営課題は抱えています。経営者の多くはそうした経営課題を外部の知見ある人にアドバイスをもらいながら解決したいとも思っているでしょう。
では直ちにコンサルティングファームに高いカネを払うかというと、そうでは全くありません。「経営課題があること」と「その解決のために高いカネを払うこと」の間には大きなジャンプがあります。つまり、コンサルティングという仕事も、マネタイズはかなり難しいのです。
それでも、中にはコンサルティングファームに高いお金を支払うことで課題解決をしようとする会社があります。
なぜそういう会社は高いお金を支払うのか?
コンサルティングファーム目線ではマネタイズできるのか?
いくつかのパターンがありますので、そこを紹介していきます。
パターン①:原資が明確にある
最もマネタイズをしやすいのがこのパターンです。コンサルティングに限らずBtoBビジネスでマネタイズするための”鉄板”とも言うべきやり方です。
最もわかりやすいのはコスト削減のプロジェクトです。大企業だとコストの無駄がたくさんあるので、それを徹底的に精査していくと数億円以上のコストが削減できたりします。
コストの無駄が例えば5億円くらいありそうだとしたとき、その5億円を原資(お財布)として2億円のコンサルティングフィーをひっぱる。こういうやり方です。
コスト削減だけでなく、業務改革や業務効率化のプロジェクトもこの手のマネタイズです。業務改革や業務効率化によって業務コストや人件費が削減されるので、そのコストが浮いた分を原資としてコンサルティングを売るわけです。
パターン②:背に腹は代えられない
緊急度が非常に高いイシューや課題があり、高いお金を払ってでもなんとかしたいという場合です。こういうときは「カネに糸目をつけず」となりがちなので、経済合理性はあまりなくても高いお金を頂けることがあります。
緊急度が高いケースというのは、社内外両方あります。
社内の場合は、上司にいついつまでに検討結果や方針を報告しないといけないというものです。
「(とある事業本部長が)社長に12月までに事業方針を説明しないといけないが、もう9月。自分たちだけでまともなプランを3ヶ月でまとめ上げられる気がしない。しからば・・・」
という形で戦略ファームを頼ってくるケースは、結構よくあります(こういう頼み方が良いか悪いかは別として)。
社外の場合は、中期経営計画でしょう。中計は3年に1回作るもので、次期中計を作るタイミングは3年に1回訪れます。上場している大企業であれば中計を対外公表し、その中身がマスコミや資本市場から評価・吟味されるため、いい加減なものは出せません。そこで、検討のスピードとクオリティを担保するために、戦略ファームが起用されるわけです。
パターン③:自身の出世のため
露骨に「自分の出世のため」とおっしゃるわけではありませんが、コンサルの発注者個人(主に、役員クラス以上)の出世のためにコンサルティングファームを積極的に活用する向きもあるように感じます。
今のポジションできっちり成果が出せるかどうかが更なる昇進の分かれ目となる。サラリーマンにはこういう局面があります。こうしたときには、カネに糸目をつけずに、外部のコンサルティングファームを活用してでもなんでも、あらゆる手を尽くして成果を出そうとするでしょう。
出世しそうな人に乗っかる、すなわち勝ち馬に乗るのがコンサルティングファームの勝ち筋でもあるので、支援する→成果を出す→プロジェクトオーナーが出世する→また発注してもらえる→・・・という好循環の中で長いお付き合いになるケースは往々にしてあります。
パターン④:会社の重要意思決定のため
もっとも健全なマネタイズです。戦略ファームのあるべき姿は、経営者の需要な意思決定を支援することです。右に行くべきか、それとも左へ向かうべきか。大企業の経営者ともなれば、会社の方向性や盛衰を左右する重要な意思決定に直面します。
経営者は意思決定するのが仕事なので、最後右か左かを決めるのは経営者自身です。コンサルタントが決められるわけではありません。ただ、経営者が自信をもって意思決定できるための「意思決定材料」は必要です。そこをコンサルタントが知恵をしぼって作るわけです。
意思決定材料の価値というのは、必ずしも明確に金額換算できるものではありませんが、非常に大きなものではあります。あえていえば、右か左かの意思決定で時価総額は左右されるため、「時価総額の増加分」が金額換算した価値になるということでしょうか。それだけ大きな価値のものなので、高額なフィーでも正当化できるということです。
まとめ
以上、コンサルティングサービスのマネタイズの4つのパターンをご紹介してきました。
①原資が明確にある
②背に腹は代えられない
③自身の出世のため
④会社の重要意思決定のため
ひょっとするとこれ以外のパターンもあるかもしれませんが、アップルの経験上主だったものはこの4つです。
このように、マネタイズするロジックが様々であるというのがコンサルティング含む法人ビジネスの面白い点です。BtoCビジネスにはここまでマネタイズロジックの多様性はありません。
もし、コンサルタントや法人営業をされている方で「これ以外にもこういうマネタイズ手法があるよ!」という知見をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひコメント欄に書きこんでいただければ幸いです!
今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!