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コンサルのマネタイズ手法を構造的に捉えてみる ~法人営業全般に通じる整理~
戦略コンサルタントのアップルです。
前回の記事で、コンサルティングの4つのマネタイズ手法を紹介しました。
戦略コンサルティングという高額商品を買ってもらうためには、クライアントの原資(お財布)に刺さるような提案をしたり、クライアントのキーパーソンとの信頼関係を築いてその人の出世に貢献していくなど、お金を払う強い動機付けが必要ということです。
そのパターンとして、4つのパターンをご紹介しました。
<コンサルティングのマネタイズの4手法>
①原資が明確にある
②背に腹は代えられない
③自身の出世のため
④会社の重要意思決定のため
※詳しくは前回の記事を参照ください
アップルの経験則をもとにこのような4パターンに類型化してみましたが、その後、これらをもっとうまく構造化できないか?ということを考えました。
そこで今回は、コンサルティングのマネタイズの構造化を絵にしたものをご紹介したいと思います。
<想定読者>
・現役のコンサルタントの方(主に戦略コンサルタント)
・戦略ファームを志望されている方
・法人営業や法人マーケティングに携わっている方々
マネタイズを構造化する上でのフレームワーク
まずは、構造を捉えるフレームワークを考えてみます。フレームワークを定める「軸」を出すため、コンサルティングのマネタイズパターンを分岐する変数は何かを考えてみましょう。
一つの変数は、コンサルを起用する動機です。動機が自分目線なのか、組織目線なのかという大きく2つがあります。「自分の出世のために成果を出したい」というのは自分目線ですし、「私利私欲ではなく、この会社をもっとよくしたい」というのは組織目線です。
無論、自分目線か組織目線かというのはゼロイチではなく、グラデーションがあります。グラデーションがある中で、自分目線寄りか、組織目線寄りかという話です。
もう一つの変数は、コンサルに求める価値です。求める価値、すなわちコンサルティングファームから「何を買いたいのか」は、3つに分けられます。
◆信頼を買う
ファームに対する信頼や、シニア個人(主にパートナー)に対する信頼があり、その信頼自体に重きを置いて起用するケースです。ファームのブランドや、長年の付き合いの中でのシニアの人間力がものを言います。
◆アウトプットを買う
戦略ファームが出すアウトプットを期待して買うケースです。最もオーソドックスなケースと言えるでしょう。自分たちでは答えが出せそうにない経営課題に対する解決策を求めたり、事業戦略や新規事業のアイデア・提案を求めたりするのがこれに当たります。
◆スピードを買う
明確に期限が決まっていたり、競争に勝つためにとにかく急がないといけないときにコンサルティングファームを起用するケースです。自分たちでも答えや施策を導けそうな場合でも、自分たちでやると時間がかかりすぎて間に合わないというときに戦略ファームを起用するということです。
さて、この2つの変数(コンサルを起用する動機とコンサルに求める価値)を軸にとってフレームワークにすると以下になります。
4つのパターンをマッピングしてみると?
このフレームに、4つのマネタイズのパターンをマッピングしてみると次の通りとなります。
なぜこういうポジショニングになるのか、少し解説しておきます。
①原資が明確にある
原資が明確にあって、その原資の削減に寄与する場合に、その原資のお財布からマネタイズできるというのがこのパターンですが、これは、組織のコスト削減をしたいという組織目線の動機であり、かつ、コスト削減や業務効率化に資する施策というアウトプットを期待するものです。そのため組織×アウトプットのポジションになります。
②背に腹は代えられない
これは、何かしらの期限が迫り、お尻に火がついてカネに糸目をつけずコンサルを起用するケースであり、求める価値は主にスピードになります。一方スピードを求める対象は、全社の中期経営計画のような組織目線のものもあれば、自身の部門の事業方針を何とか固めないといけないといった自分目線のものまで、動機には幅があります。
③自身の出世のため
自身の出世のためということなので、まず自分目線の動機になります。また、自身の出世を手助けしてもらう相手には相応の信頼関係が前提となります。ですのでコンサルティングファーム、あるいは特定のコンサルタントの信頼を買うという色合いが強くなります。
④会社の重要意思決定のため
これは明らかに組織目線です。社長や専務常務などのエグゼクティブの場合、組織目線≒自分目線になりますが、それでも自分が退任した後の将来まで見据えて策を打とうとするかは個人差があります。特にオーナー企業のオーナーの場合は、会社のことがかわいいのでより組織目線になるでしょう。
会社の命運を左右するような重要意思決定のサポートは、当然信頼のおけるコンサルティングファームに頼むことになります。長年の付き合いの中で確かな実力と成果を出してきたコンサルタントでありコンサルティングファームだけがこういう仕事を請け負うことができます。
こうして4つのマネタイズパターンをマッピングしてみると、フレームの中にバランスよく散らばります。4つのパターンがそれぞれ異質なマネタイズ手法であることが良くわかると思います。
第三の軸と、それが物語ること
このフレームを”斜め”にみてみると、もうひとつの軸が見えてきます。
「クライアント企業へのインパクト」という軸です。
右上に行くほど、クライアント企業へのインパクトが大きくなります。その分、大きなお金を頂ける可能性が高いですし、コンサルタントとしてやりがいのある仕事にもなります。
ただ、この図が示すとおり、右上にいけばいくほど「信頼」がものをいう世界になります。コンサルタントとして、あるいはコンサルティングファームとして確固たる知見や技があることに加え、
・人として信頼できるかという人間力
・長年の付き合いの中で培われた信頼貯金
が必要になります。
これらは一朝一夕で作れるものではなく、コンサルティングという仕事に真摯に粘り強く向き合う中で徐々に形成されてくるものです。
単に頭キレキレというだけでなく、こういう営みをコツコツとできるかどうかが、コンサルタントとして大成するかどうかの結構大きな分かれ目なんじゃないかとアップルは感じています。
このフレームは法人営業全般に通ずる
なお、今回提示したフレームワークは、法人営業全般にある程度通用するものではないかと思います。
法人営業である以上、どんな商品を売るにせよ、売り込む先の意思決定者の動機が自分目線なのか組織目線なのかという話はあります。また縦軸の求める価値も、売る商品によって分類の表現は変わりますが、信頼を買うのか、それとも即効性のある価値を買うのか、という幅はありそうです。
ちなみに、法人営業、すなわちB2Bのビジネスというのは、営業相手が組織であり個人であるというのが面白い点です。
・表向きは組織に対して営業をかけていますが、購入や契約の意思決定者は人なので、実態としては人に対して営業をかけている
・法人を代表して商談に臨む意思決定者は、自分の財布ではなく、法人の財布を使って購入、発注する
こうした「組織と個人の二面性」が、今回のフレームワークで示したようなマネタイズ手法のパターンの幅につながっているように思います。
個人を相手にしたB2Cビジネスについても、同様の考察を別途機会があればしてみたいと思います。
今回は以上です。
最後までご覧いただきありがとうございました!