仕事ができる人とできない人の動き方の差について
戦略コンサルタントのアップルです。
Twitterで掲題の内容を図解したものが想定以上に拡散しました(これまでも色々図解をツイートしてきましたが、今回のが最も多くインプレッションを集めました)。
戦略コンサルティングに限らず、ほかの職種、業種でもこれに近い構造があるということで共感を生み拡散したのではないかと推測しています。その一方で、この図解に対するご意見めいたコメントも多く寄せられました(中には異論を唱えるものも含めて)。
ということで少し丁寧に補足説明しておいた方が良いかなと思い、記事にしておこうと思います。
できる人とできない人の”平均的な”動き方の差
仕事ができる人とできない人の行動特性には様々な側面で差があります(そこに着眼した書籍も多数出版されています)。当然、仕事ができるかできないかは個々人の特性によるものであり、ケースバイケースではありますが、「大きく平均的に捉えると、こういう特性の差がある」というのもまた事実です。どんな仕事に従事するにせよ、仕事ができる人すなわちハイパフォーマーの特徴を理解し、それをまねようとすることは大切であるとアップルは考えます(守破離でいう「守」の部分)。
組織で仕事をする以上、社長でもない限り上司がいます。いかに上司と円滑にコミュニケーションをとりアウトプットを出していくかは、ほとんどのビジネスパーソンにとって重要な事柄と言えるでしょう。
そこで、「上司とのコミュニケーションの取り方」という観点でできる人とできない人の行動特性の差を絵にしてみたのが、ツイートした以下の図でした。できるコンサルタントとできないコンサルタントの差を大きく捉えるとこういう感じだよな、という経験則をもとに描いてみたものになります。
図表1:仕事ができる人とできない人の動き方の違い
戦略ファームに当てはめると、上司(ネクタイを締めている人)がマネージャー、部下(歩いたり走っている人)がコンサルタントです(パートナー(上司)とマネージャー(部下)との間でも成り立ちます)。
それぞれの動き方の特徴は以下のとおりです。
<できる人の動き方(図の上側)>
・前工程で上司とこまめに相談し、アウトプットの方向性についてコンセンサスを取ろうとする。口頭でのラフ相談も積極的にやる
・特徴はこの前工程でしっかり思考する点。考え抜いてアウトプットイメージを作ろうとする
・上司と方向性を握った後は、アウトプットを作るための作業に邁進する
・方向性について握れているため上司からちゃぶ台返しを受けることもない
<できない人の動き方(図の下側)>
・前工程で上司と相談するのを怠り、とりあえず作業を進める
・ある程度アウトプットが形になった段階ではじめて上司に相談する。大概の場合、上司のイメージとズレがあるので、手戻りが生じる
・また突っ走って作業する。また相談して、手戻りが生じる
・これを何度か繰り返し、ようやくアウトプットにこぎつくが、道中で手戻りが発生しているため、結果的に時間がかかってしまう
できる人の動き方は無駄がありません。手戻りがないため、アウトプットに最短距離で到達できます。アウトプット÷投下時間という意味での生産性が高い状態であることがわかります。加えて、上司の時間やリソースも最小限しか使っていません。つまり上司・部下双方にとってハッピーな状態と言えるわけです。
一方でできない人の動き方は、無駄が多いです。手戻りが何回か発生し、やった作業の一部が無駄になります。無駄になったアウトプットが「サンクコスト(埋没費用)」になるため、それに固執する重力が働くことが、さらに無駄を発生させるという悪循環になるリスクもあります。その道中で、上司も方向付けのために頭と時間を使うため、上司にとってもストレスフルになります。つまりお互いにとってハッピーでありません。
ちなみに、これはディスクレーマーですが、この図ですべてのできる人・できない人を表現できているわけではありません。というのも、
・業種・職種によってできる人の動き方(できない人の動き方)は変わってくる
・できない動き方をしている人でも、中にはできる人もいる
からです。あくまでも「コンサルなどの知的労働」における「平均的な傾向として」ということで受け取っていただければと思います。
なお、ものすごく突き抜けたできる人は下の動き方から出てくるという感覚もあります。一見遠回り、無駄だと思えることを愚直にやる中でものすごく力が上がったり、効率主義者には見えない景色が見えるようになるケースがあるのも事実だからです。実際、戦略ファームでも、そのようなタイプで結果的にすごいハイパフォーマーになっている人を見かけたことはあります。
Twitterで寄せられた声
Twitterで拡散する過程で、多くの方からこの図に対するコメントやご意見を頂きました。「全くこの図の通りだ」とか「私はできない人の動き方になっているので変えていかないと、、」といった賛同・共感の声も多くありましたが、その一方で、「上司側のマネジメントの問題も多分にあるんじゃないか?」「部下がどっちの動き方になるかは上司次第では?」といった指摘も多くいただきました。
これは全くそのとおりで、仕事は上司と部下の共同作業である以上、互いの相互作用によってどちらの動き方になるかが決まる側面はあります。その原則は前提とした上で、「上司・部下のどちらが動き方への責任を主に負っているか」については、業種・職種によってばらつくというのが今回の様々な反応を踏まえたアップルの理解です。
例えば戦略コンサルティングファームのようなプロフェッショナルファームでは、動き方の責任は主として部下が負っているケースが多いのではないかと思います。プロフェッショナルとして与えられたミッションは完遂する。そのために必要な動き方も部下の側が能動的に設計する。こういう考え方ですし、プロフェッショナルファームである以上そういう考え方であるべきだと思います。
一方、そうでない業種・職種、すなわち指示・命令する側の上司が部下の動き方をコントロールすべきであり、両者が噛み合っていない場合は主として上司にその責任がある、という考え方の業種・職種もあると思います。
とこのように、業種・職種による差異はあるわけですが、上司部下の組み合わせによってどう変わるかについての大まかな構図をアップルなりにまとめたのが下図です。
図表2:上司と部下の組み合わせと動き方の関係
左側には、そもそもできる上司/できない上司、できる部下/できない部下とは何なのかについて、アップルなりの理解を書いています(これもあくまで一つの定義です。業種・職種によって異なる部分もあるため、この定義が当てはまらないケースもあると思いますが、「最大公約数の定義」としては概ね違和感ないのではないかと思います)。
できる上司というのは、相談しやすくて、判断力が高くて、スピードを重視するという特性をもっています(平均値としてはそうだと思います)。またできる部下は、アウトプット志向で、フットワークが軽くて、スピード重視という特性をもっています(同)。
右側の図が上司と部下の組み合わせですが、鍵型に入り組んでいるのがポイントです。
できる部下でも、できない上司の下に付いた場合は、「できる動き方」ができないあるいはしづらいケースはあるでしょう。前工程で方向性を相談したいのに、上司が相談にちゃんと乗ってくれない場合などが考えられるためです。また逆にできない部下も上司ができる人であれば、上司の導き(相談するタイミングを指示する等)によって「できる動き方」になる可能性があります。
上司・部下ともに「できる動き方」の方がハッピーなのは事実なので、お互いの努力によって「できる動き方」を目指すことが大事と言えるかと思います。
参考図書(トップ5%社員の特性をまとめた本)
とこんな考察をしている前後に、偶然以下の本を読みました。
(Twitterでも紹介させていただきました)
様々な会社で成果を上げているトップ5%の社員の行動特性やマインド特性を抽出してまとめた本です。客観的なデータに基づいているため、「確かにできる人ってこうだよな」と説得力がある内容になっています。
本書ではできる人の様々な特性が示されていますが、「完成度が20%で意見を求める」という、今回のアップルの整理(できる人は上流工程で相談・議論する)に近しい特性も書かれています。ご興味ある方はぜひ読んでみてください。
今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!