3つの必修科目から学んだ、人生で大切なこと
高校時代に学んで良かったと思えるものは、何だろうか。
私にとって、国際バカロレア(IB) Diplomaコースで学んだ3つの必修科目は、意義あるものだった。ここでは、それぞれ紹介していく。
TOK (Theory of Knowledge)
知の理論
科目名からして、どんな授業なのか全く想像出来なかった。実際には、倫理や哲学などを中心に学ぶ。1つの物事に対して、さまざまな視点から考えるため、とにかく頭がこんがらがりそうになる。自分の思考の偏りに気づける授業だ。また、過去の戦争についても考える機会があり、私のクラスは10カ国以上から学生が集まっていたので、1人1人異なる価値観に基づいた意見を聞けたのは、貴重だった。私が日本人だからかもしれないが、原爆はセンシティブな話題に感じた。
科目の評価としては、1人20分のプレゼンテーションを行う。発表時間が長いため、念入りな準備が必要だ。また、プレゼンテーションとは別に、2,000字程度のレポートも作成する。テーマは、IB本部から公式発表されている5つ程の問いの中から、1つを選択する。問いは難解だ。ネイティブの先生に聞いても、よくわからないと言われ、何とか理解できそうな問いを選んで、書いた。プレゼンテーションとレポートの出来が、IBの最終成績に反映される。
1つの物事に対して、別の角度から捉えてみると、今まで気がつかなかった新たな発見がある。自分の思考の偏りを認識したことで、人の考え方や哲学に興味を持つようになった。
常に色眼鏡をかけてしまっていることを自覚し、時々それを外したり、ほかの眼鏡をかけてみる重要さを学べた授業だった。
CAS (Creativity, Action, Service)
創造、運動、奉仕
学校時間外に2年間で各50時間活動する。最終的に、振り返りレポートを作成し、学校へ提出する。以下は、私が行ったCAS活動の例だ。
(※現在のカリキュラムでは、各50時間活動するのではなく、7つの学びの成果を達成するというように変わったそうだ)
Creativity
音楽院へ通い、レッスンや音楽理論を学んだ。他にも、学校の聖歌隊で伴奏を行ったり、文化祭や大使館関連のイベントで演奏した。
Action
ヨガをしてみたり、ランニングをしてみたり。
その他、学校行事としてIBクラスで1泊2日の旅行へ行き、泥まみれになりながらのアスレチックや、極寒の中でのカヌーを楽しんだ。
Service
日本語補習校で、図書管理や整理をした。その他、ベビーシッターなど。
人間が幸せに生きるために、必要なものは何か。CASでは日々の生活で大切にすべきことを学べた。創造は自分の世界を表現し、心の豊かさを育み、運動は心身の健康を保つ。奉仕は社会の一員として自分の力を人のためにも使うことで充実感を得られ、社会にも良い影響を与える。これらは、私にとって大きな気づきで、今でも日々の生活において心がけたいと思っている。
EE (Extended Essay)
課題論文
自分の選択した6科目の中で、自由に論文を書く。文字数は英語で4,000字、日本語で8,000字程度だ。日本語で論文を作成できるのは、科目1で文学(日本語)を選択した上で、論文を文学でテーマ設定したときのみとなっている。
自分で全てを決められるのは良いが、最初はどのように進めていけば良いか分からなかった。ぼんやりと考えたものを、先生へ相談するうちに、論文の全体像が見え始め、次第に書くのが楽しくなっていった。ほかのIBの学習をしながら、1つの論文を書き終えたときには、とても達成感があった。知らないことが分かるようになる面白さや、興味の広がりも実感し、学び続けることで、きっと人生はわくわくし続けるだろうと思えた科目だった。
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もし、学校の勉強をつまらなさそうにしている子どもが周りにいたら、こんな学習もあるよと教えてあげたい。1人1人が異なる個性と才能を持っているがゆえに、教育はもっと多様であって良いと思うからだ。
その選択肢の1つとして、IBはどうだろうか。