地理IAは一生忘れられない
まさか、高校生になって、川で石を集めるとは思ってもみなかった。
国際バカロレア(IB)では、以前の記事でも触れたように、最終試験以外で、インターナル・アセスメント(IA)と呼ばれる内部評価が行われる。その評価の対象となるのが、各科目における研究課題だ。
地理IAでは、フィールドワークを実施し、研究レポートをまとめる。
私の学校では1泊2日の泊まり込みでフィールドワークが行われた。ヨーロッパのすぐ天気が悪くなる国で学習していたため、天候がとても不安だった。(後に予感は的中する)
朝早くに学校からバスで出発し、森の中に入っていく。民家もなくなり、ようやく今回利用する学習センターに到着した。
そこでは、まず地図を広げて、これから行く川についての位置関係を把握したり、その周りの地形について学習する。川にヒルがいるかもしれないので気をつけるようにと脅されたりもした。
また、ここへ来る前に、今回の研究テーマとなる、川についての仮説を2つ立てる。フィールドワーク当日は、その最終確認も行なった。仮説は割とざっくりしていて、例えば、「水源からの距離によって、川の特徴は変化する」といったようなものだ。
その後、実際のフィールドワークでは、川へ行き、全部で6現場を回る。1現場2箇所で測定を行うため、データは合計12箇所で集める。
川では、横幅や深さ、流れの速度などを計測する。他にも、石を拾って、形の特徴やサイズを記録する。
1箇所につき、各項目でデータを複数集めるため、非常に時間がかかる。例えば、川の深さは、川縁を含めた5ポイントで測定する。
また、長靴を履いて、川の中で計測を行うため、体力も消耗する。現場によっては長靴では対応しきれず、ずぶ濡れになる。寒い国だったため、ガタガタ震えた。途中から雨が降り出しても、ドイツ人やアメリカ人の女の子は、「へっちゃらよ!」とどんどん川に入っていき、本当に尊敬した。これぞガールパワーの真髄だ。
このように、肉体的に大変なフィールドワークだったが、その後のレポートまとめも地味な作業だった。まず、今回訪れた川についての概要を述べ、計測結果を各場所ごとに記載していく。そして、データを考察し、自分の立てた仮説についての検証を行う。
レポートは英語で2,500語程度にまとめる必要があり、ページ数は地図やデータ、測定中の写真を含めて40ページ近くに上った。
今もう一度やりたいかといえば、全然そんなことはないが、過酷なフィールドワークを通じて、かなり精神面が鍛えられた。また、仮説を立てて、収集したデータを分析・考察していくことが、いかに地道かも学んだ。この仮説と検証があってこそ、新たな発見が可能になるのか…と学者でもないのに、なんだか気が遠くなった。
机上の勉強以外は「ゆとりだ」と捉えられがちだが、決してそんなことはない。そう強く感じた経験だった。