優しい気持ちになれるものがすき
登場人物たちが粛々と、日々を生きていく物語がすきだ。大きな事件は起こらないけど、ミステリー小説とはまた違ったおもしろさがある。
小川洋子さんの小説とか、益田ミリさんのエッセイとか。
この2人の作品はタイプこそ違うけど、どちらも飾っておきたくなるような言葉があちこちに詰まっていて。「この本に出会えてよかったな」と思う。
それと、カフェを舞台にした小説を読むことも多い。
映画化もされている、お気に入りの小説を2つ。読み終わったあとに、優しい余韻がじんわりと広がっていくような作品。
しあわせのパン/三島 有紀子 (著)
物語の舞台は、北海道にある小さな町・月浦。洞爺湖が見渡せる丘の上にあるパンカフェ「マーニ」を営む夫婦と、さまざまな年代の人々のやりとりが丁寧に描かれている。
夫婦のやりとりや、相手を思いやる行動に、心からあたたかい気持ちになる。
あとは、コーヒーと素朴なパン、ポタージュなど、物語に登場するメニューも魅力的。実際にこんなカフェあったらいいなあ、と思わずにはいられない。
映画の原田知世と大泉洋さんもはまり役。映画もとってもおすすめ。
4年前、洞爺湖町にはひとり旅で行ってきたのだが、幻想的で本当に美しいところだった。素敵なカフェやパン屋さんもたくさんあるので、また行きたいな。
舞台となったカフェ「ゴーシュ」から実際に見た景色は忘れられない。
虹の岬の喫茶店/森沢 明夫 (著)
喫茶店「岬カフェ」を営むのは、女性店主の悦子さん。30年前に夫を亡くした彼女は、お店を訪れる人々に、コーヒーはもちろん、音楽や優しい言葉を与え、寄り添ってきた。
心に傷を抱えながらも、登場人物たちは顔を上げて生きていく。読んだ後、じんわりと感動が広がるような物語。
千葉県鋸南町の明鐘岬にあるカフェ、「音楽と珈琲の店 岬」が舞台になっているそう。この本を読んだ後に、「いつか、こんなカフェに出会いたい」と、夢を見つけたような感情になった。
映画では、女性店主を吉永小百合さん、常連客を笑福亭鶴瓶さんが演じているのもとっても良い。
最近訪れたカフェもまた、物語に出てきそうな素敵な場所だった。
愛知県稲沢市にある「喫茶室 絲 (いいと)」。
のどかな田園風景の中に、ぽつんとある隠れ家のような佇まい。しずかな時間が流れていて、とても居心地の良い空間だった。
このときは友人と訪れたが、壁に向かった席やカウンター席もあるので、ひとりでも周りを気にせずに過ごせそう。
小説や映画、カフェなどの「非現実的な世界」は、心を穏やかに、優しい気持ちにしてくれる。「なんだか疲れたなあ」と思う時、心の拠り所になってくれるものを、これからも大切に生きていきたいな。