無題

くだらないことを言って笑うところが好き。おはようって声をかけたら、小さく手を振っておはようと返してくれるところが好き。
中央にある水道の蛇口から水がゆっくり、ゆっくり重力に誘われて落ちていくように涙を流すあなたを見て心が張り裂けそうになるの。
泣かないで、苦しまないで、わたしが素直になれるくらい素敵な人なのに、どうして?
大丈夫だよ、ずっと一緒にいようよ。わたしが目を開けているから、安心して目を瞑っていてよ。
やっと目を瞑れても、すぐには眠れないよね。考えちゃうよね。人は考えなくていいんだよって言ってくれるけれど、そう、それが正しいってわかってるけど、どうしても考えないなんてできない時があるよね。目を閉じても怖いものが消えてくれない時があるよね。涙が滲んで、頬を伝って、耳に沿って流れて少し気持ちが悪くて。嗚呼、明日腫れちゃうって思いながら眠るの、怖いね。いいんだよ、夜通し繋げてくれる人たちに頼ったって。もういいんだって、離れていこうとしたって、そんなこと言ったってさ、人を愛せる人だから、寂しくなっちゃうでしょ?やめてよって言うくせに、もういいよって、言うくせに、泣くの止められないでしょう?あのね、人の悩みを聞いて、自分が悩んでしまうのは本末転倒だと思うの。それなら悩みなんて聞かない方がマシだと思うの。これは、まあ、受け売りなんだけど。でも本当に、そう思うの。でもね、これは影響されて悩んでいるんじゃなくて、ほんと、悲しい顔してるのが悲しいの。いいんだよ、どこか遠くへ行ったって、笑ってられるならいいんだよ。毎日笑ってばかりいられるようなものじゃなくたって、せめて悲しい顔をする日がなければいいの。脆い、脆いよ。脆くてほんと、あぶなっかしいよ。でもその脆さが美しさで、透き通っていて繊細で綺麗だって知っているから、強くなってなんて思わないの。強くなれたら楽になるかもしれないけれど、この繊細さを全部まるまる憎めないのなら、とっておこうよ。強くなるって、これを強くするだけじゃなくて、強い入れ物を用意したっていいんだよ。守ってもらえばいいんだよ。ここにあるよ。大丈夫だよ。大丈夫じゃなくても大丈夫だよ。1人で泣きたくない日に1人で泣かないでよ。笑って過ごすのは苦しい?全部忘れてしまいたい?耳を塞いであげるから、もう何も聞かなくてもいいよ。怖くないよ。やっぱりちょっと、ちょっとだけ、こわいね。壊せないよ。引き裂けないよ。こんなに綺麗な色をしているのに、そんなことできないよ。喉の奥が焼けて爛れ落ちそうだ。心臓を素手で握られて、喉元に刃物を突きつけられるんだ。そうだね。真っ暗で前が見えなくて、安心するのに見えないことが怖くなるね。大丈夫、灯りたくさん持っていくからさ。重そう?全然重くないよ。うーん、やっぱりさすがにちょっと重いかも。半分持つ?ありがとう、一緒に持とうか。いつもみたいにくだらない話をしても、こわいの、脳裏にこべりついて離れてくれないかな。もう!本当に迷惑なんだから。剥がれてくれなきゃやだよ。ねえ、そろそろ眠たくなってきた?それとも、まだ眠れそうにない?眠れない夜に暖かいはちみつミルクでも入れようか。
眠れないならね、実は、起きててもいいんだよ。知ってた?意外と知らない人多いんだから。
眠れない夜はあるんだよ。眠るためにあるようなものなのにね。そう思ってたでしょ?違う?
うん。夢まで着いていくつもりだから。ええ?どうだろうなぁ。ない方がもしかしたら、楽なのかもしれないけど…やっぱり、わたしはあった方がいいよ。わたしも綺麗な色になれるし。綺麗なもの見てると影響されるのかな。これはいい影響だね。そうだね。眠たくないよ、眠たいけど眠たくないの。おやすみ、?でもまだ眠れないんでしょう?こういうのって罪悪感与えちゃう?バカだなって思っとけばいいんだから。ね。おやすみ。みんなの夢が虫に襲われる夢だったら、わたし面白くて毎日楽しく生きられるから、蜂にぶつかる夢とか見てね。それでわたしに教えてね。怖くて眠れなくなる?夢だから大丈夫だよ。いいよ、本当に蜂とか出てきたら叩き起して。絶対出てこないけどね。おやすみ。

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