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#ネタバレ 映画「ハドソン川の奇跡」

「ハドソン川の奇跡」
2016年作品
清濁併せ呑む
2016/9/12 21:26 by さくらんぼ  (修正あり)

( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

新聞を見たら、映画のチラシにも使われている「水面に浮かぶ飛行機を、正面からとらえた写真」が掲載されていました。全面広告の映画「ハドソン川の奇跡」です。

映画「フォレスト・ガンプ/一期一会」では「鳥」が象徴的に使われていましたので、水面に浮かぶ飛行機は鳥かと推理してみましたが、違うようです。鳥にも似ていますが、こちらは「天秤ばかり」でしょう。

乗客が飛行機の左右ドアから出て、主翼の上に半数づつ乗っています。左右のバランスを上手くとらないと、重い方の主翼は水面下に沈み、上客は溺れてしまうかもしれませんから。

この「天秤ばかり」が映画の主題かもしれません。つまり「清濁併せ呑むことが必要である」と。これは「機長の着水判断」のことでもありますし、「機長を裁く人たちの見識」のことでもあります。

勝手なこと書きましたが、私はまだ映画を観ていませんし、予備知識も新聞広告程度しかありません。だから、このレビューもよっぱらいの戯言だと思ってください。映画を観ることできましたら、また追記したいと思います。

追記 ( 「空港物語」 ) 
2016/9/29 21:18 by さくらんぼ

映画「ターミナル」は「法律のすき間に落ちた、一人の旅行者の話」でした。

ならば映画「ハドソン川の奇跡」は「英雄と罪人とのすき間に落ちた、一人の機長の話」なのです。

これにて「空港物語」の完結か。

「奇跡」は二度起こっている 
2016/9/29 22:16 by さくらんぼ

① サレンバーガー機長(トム・ハンクス)は、従軍時代、トラブルの起きた高価な戦闘機(ファントム)を壊すまいと、無理して飛行場まで操縦してきたことがありました。実際に、その様な事例では墜落することも多く、その一件が彼の隠れた「トラウマ」にもなっています。

今回のハドソン川の旅客機不時着では、ぎりぎりの飛行場へ着陸挑戦するのではなく、吸い込まれるように眼下の川に不時着しました。機長はその決断を「やもうえない事」として頑として譲りませんでしたが、実は、決断の「遠因」は、従軍当時の「トラウマ」だったのかもしれません。

② 国家運輸安全委員会の厳しい追及では、フライトシミュレーターを使って検証が行われていました。

そして、いろいろあった後に、サレンバーガー機長の、「人的要件が考慮されていない」との反論で、「35秒間の思考時間」を入れて、つまり「35秒間、何もしない時間を入れて」再検証しました。

そうしたら、フライトシミュレーターが「墜落警告」を発したのです。そのとき副操縦士が「フラップを下げますか?」と尋ねましたが、機長は「いいえ、このままにします」とつぶやく様に答えました。やがて飛行機は滑走路に届かず墜落します。

③ サレンバーガー機長は「英雄なのか罪人なのか」。世論の大勢は「英雄」と見ていました。「9.11の、悪夢の再現を防いだ神」そんな功績がニューヨーカーならず米国民を狂喜させていたのです。

いろんな要素があり、上手く全部は書ききれませんが、もしかしたら、この映画「ハドソン川の奇跡」は、映画「ターミナル」と同じく、一人の主人公の「人徳」からスタートしたものが、世論の後押しを受け、国家運輸安全委員会の風向きまでも変えてしまうお話なのでしょう。

彼らが断固として糾弾するつもりなら荒捜しはできた。しかし事実上、彼らは途中で追及をやめてしまったのです。とくにシミュレーターの、さりげない「フラップ」のシーンは意味深でした。

つまり「ハドソン川の奇跡」とは「ダブル・ミーニング」 であり、「風向きが変わる奇跡」の軌跡にこそ、この映画の真骨頂が隠されているのではないでしょうか。155人が無事だったことの他にも露骨に語られない「宝石」が隠されてるのです。

追記Ⅲ ( 点数 ) 
2016/9/30 7:22 by さくらんぼ

映画「ハドソン川の奇跡」では、9.11のような墜落映像が何度も出てきますが、あれは「ファントムのトラウマ」も示唆していたんですね。

映画のラストには実際の機長も登場しましたが、拝見するとトム・ハンクスよりも「繊細な感じがする、優しそうな人」でした。でも過去の「トラウマ」が人々を救うこともあるのですから、人生は分かりませんね。

3.11でも、怖がって「津波てんでんこ」で逃げた人は助かっても、「そんな大津波は、まさか来ないだろう」と思った人の中には逃げ遅れた人もいたようですから。

追記Ⅳ ( 米国民のトラウマ ) 
2016/9/30 8:32 by さくらんぼ

米国の世論は「9.11の、悪夢の再現を防いだ神」として、サレンバーガー機長を罪人にする事を許しませんでした。でもそれは「米国民の9.11のトラウマ」を証明したようなものです。だから、この映画は「トラウマの映画」だと言っても良いのかもしれません。

追記Ⅴ ( 下げなかった「フラップ」 ) 
2016/10/1 6:40 by さくらんぼ

>彼らが断固として糾弾するつもりなら荒捜しはできた。しかし事実上、彼らは途中で追及をやめてしまったのです。とくにシミュレーターの、さりげない「フラップ」のシーンは意味深でした。

野暮を承知で「フラップ」についてもう少し書いておきます。いつも通り、これは私の「夢想」です。

サレンバーガー機長に「『私のママがファンです。ママは独身です』と言って、いきなり抱きつき、『これはママの代わり』」と言うシーンや、「いきなり抱きついて頬にキスするシーン」があります。

機長も困惑し、別室で「なんなんだ、これは?」と友人に言うと、友人は「若い女がいきなり抱きついたんだ!」と、答えになっていない答えをしたのでした。これは伏線かもしれません。

特にこの「なんなんだ、これは?」は、「試験に出るぞサイン→」だと思います。その「→」はどこを指しているのかと言うと、女性つながりで、国家運輸安全委員会のシミュレーターを操縦していた「機長役のおばさん」でしょう。機長に抱きついた女性の母だとは断定されていませんが、年齢的には母ぐらいに設定されています。

サレンバーガー機長を世論は「神」だと思っているし、飛ばし屋のあのおばさんにとっても「偉大な神」です。でも、お役目とはいえ、そんな機長を糾弾しなくてはならない。その悶々とする不条理。

そして査問会の日。機長をハメるため、卑怯にも当局からシミュレーションは17回も事前練習させられたのに、それを知ったサレンバーガー機長からは、思いやりのある言葉をかけられ、こらえきれず寝返るのです。

「墜落警報」が鳴った時、副操縦士が「フラップを下げますか?」と言ったのに、「いいえ、このままにします」とつぶやく様に答えたのは、「今からサレンバーガー機長の味方をする」という「密かな決心」だったのかもしれません。そして想定どうり墜落。

その後、国家運輸安全委員会の面々は別室で審議することになりますが、当然「なんでフラップを下げないんだ!」という質問が出たはず。

ご存じのとおり「フラップ」は「飛行機の揚力をアップさせるもの」。しかし空中に浮かんでいる飛行機の操縦はそんなに単純なものではありません。不用意に「フラップ」を下げることでバランスを失うこともあるはずです。彼女は声高にそう主張し、あの状況下で、そんな「奇跡」が可能なのは「サレンバーガー機長」だけだと断固主張したのでしょう。

この一言で審議の流れが変わりました。

なにしろ世論の大勢は「機長を罪人にすることは神を裁くに等しい」と憤慨していたから、国家運輸安全委員会の面々も『悪魔役にならずにすんだ!』と「内心ほっとして」、その風に流されることにしたのです。

査問会のラストでは、先ほどまで苦虫を噛み潰したような顔をしていた面々が、「機長、あなただからこそ奇跡が起こせたんです!」と言って、心底嬉しそうに微笑むシーンが印象的でした。

この前後に、片方のエンジンが止まっていたとか、いなかったとかの調査報告がなされますが、それ以前に、一人のおばさんが審議の流れを変えてしまったことが「奇跡」なのです。

そして真実がどうであれ、審議で「結論が出た」のですから、ときに証拠がそれに合わせて微調整されることがあるのは、どこの国の、どんな事例でも、似たようなものかもしれません(ほんとに?)。ある意味「初めに結論ありき」の体に変化したのかも。ただし、少なくともその結論は「正しい見識」下のものでなければなりません。

初めにも言いましたが、ここに書いたのは映画をヒントにした私の夢想です。まったくもって事実ではありません。

追記Ⅵ ( 「第五チャクラ」 )
2016/10/2 7:41 by さくらんぼ

>乗客が飛行機の左右ドアから出て、主翼の上に半数づつ乗っています。左右のバランスを上手くとらないと、重い方の主翼は水面下に沈み、上客は溺れてしまうかもしれませんから。

このチラシの中央には「横を向いて喉に手のひらを当てた」機長が、「もやもやとした曇天」のような背景の前に立っています。まるで防犯カメラに写った「指名手配の写真」みたいに。

もしこれがキリストだったら「まばゆい光の中、優しいまなざしで正面を向いている」でしょうし、「スーパーマン」だったら「青空をバックに、キリっと腕を組み、仁王立ちになって正面を向いている」ことでしょう。

チラシからサレンバーガー機長には「まだ語っていない何かがある」のが伺えます(それは従軍時代のファントム故障のトラウマでしょうか)。

ちなみに「喉」は「第五チャクラ」であり、「コミニュケーションや自己表現」のエネルギーセンターです。その影響で「長期間言いたいことを我慢していると喉が痛くなることがある」とも言われています。

追記Ⅶ ( まとめ ) 
2016/10/2 7:58 by さくらんぼ

この映画には「ファントムのトラウマから逃げるサレンバーガー機長」、「9.11のトラウマから逃げる米国民」、「フラップを下げることから逃げるおばさん機長」、「世論を敵に回すことから逃げる国家運輸安全委員会」が出てきます。

そして最後には「みんなの思惑が一致」して「新たな価値」を生んだわけです。

もしかしたら、これは「経営学の話」でもあったのでしょうか。

そう言えば映画の前半、サレンバーガー機長が副業で密かに「会社経営」しているような話がチラリと出ていたような。

追記Ⅷ ( 別表記 ) 
2016/10/3 5:58 by さくらんぼ

>そして最後には「みんなの思惑が一致」して「新たな価値」を生んだわけです。

「-1」×「-1」×「-1」×「-1」=「1」

あるいは…

「赤信号みんなで渡れば怖くない」。

追記Ⅸ ( 制服とネクタイ ) 
2016/10/14 10:01 by さくらんぼ

>チラシからサレンバーガー機長には「まだ語っていない何かがある」のが伺えます(それは従軍時代のファントム故障のトラウマでしょうか)。(追記Ⅵ より)

私が人事異動で新しい職場へ行った直後の話です。夏でクールビズになり、ノーネクタイでもOKでしたが、私はネクタイを外せませんでした。まだ新しい仕事に自信がなかった分だけ「ネクタイで威厳を保とうとした」のです。特に接客するときは。

映画「ハドソン川の奇跡」では、飛行機が無事に不時着した直後、全員を避難させた機長は、「制服」を着て機外へ出ます。

寒かったせいもあるでしょう。でも、たしか後に副操縦士からの、「何でネクタイなんかしてるんだ」という言葉にもあったように、「制服にこだわる姿」は、自信ありげな外面とは裏腹に、「内面の心細さ」の記号でもあったのだと思います。

追記Ⅹ ( 「勝てば官軍」 ) 
2019/1/22 22:19 by さくらんぼ

>彼らが断固として糾弾するつもりなら荒捜しはできた。しかし事実上、彼らは途中で追及をやめてしまったのです。とくにシミュレーターの、さりげない「フラップ」のシーンは意味深でした。(「奇跡」は二度起こっている より)

>米国の世論は「9.11の、悪夢の再現を防いだ神」として、サレンバーガー機長を罪人にする事を許しませんでした。(追記Ⅳより)

>なにしろ世論の大勢は「機長を罪人にすることは神を裁くに等しい」と憤慨していたから、国家運輸安全委員会の面々も「悪魔役にならずにすんだ!」と「内心ほっとして」、その風に流されることにしたのです。

査問会のラストでは、先ほどまで苦虫を噛み潰したような顔をしていた面々が、「機長、あなただからこそ奇跡が起こせたんです!」と言って、心底嬉しそうに微笑むシーンが印象的でした。(追記Ⅴより)

この映画では、査問会が「世論の大きな影響を受けている」様が描かれています。

その様なことは、映画の中だけかと思っていましたが、もしかしたら、そうでは無かったのかもしれません。

私たちの周りにも、毎日のように複雑な出来事が起こります。その解決方法、正解は、神様でなければ、どんなに賢い人でも、毎回分かるとは思えません。

専門家や、政治家先生に聞けば分かると言う人もいるかもしれませんが、新聞等を見れば分かる通り、専門家でも政治家でも、意見が食い違うことは、当たり前にあるのです。

そんな中、毎回、正しいコメントをしなければならない人たちがいたとしたら、その人たちは、いったいどうやって、事前に正解を知るのでしょう。

もしかしたら、もしかしたらですが、とりあえず、世論に従っておくという手法もあるのかもしれません。

後の世に、もし誤りだったと分かったとしても、「そういう時代だった」と、しみじみ弁解できるかもしれないからです。これが、世論に逆らった独自の見解をごり押しでもしていたら、なかなか弁解できませんね。

追記11 2011.11.17 ( お借りした画像は )

キーワード「ラーメン」で検索したら(「奇跡」→「日本の芸術的なラーメン」を連想したので)、意外にもこのお花が出てきて、あまりにも美しいので目が離せなくなりました。なんでも、ラーメン屋さんにあったお花のようです。無加工です。ありがとうございました。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)

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