#ネタバレ 映画「バハールの涙」
「バハールの涙」
2018年作品
DVに苦しむ母子に捧ぐ
2019/2/6 18:20 by さくらんぼ(修正あり)
( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
予想通り、暗く地味に始まる作品です。
でも、気がつくと、往年の人気TV「コンバット」みたいな戦争ドラマになり…
その熱量に、もしかしたら、映画「コマンドー」も、映画「エイリアン2」も、映画「バハールの涙」へのオマージュじゃなかったのか、という倒錯した気持ちになって…
ラストには、従軍カメラマンにでもなったように、呆然としている自分に気づくのです。
かなり、すごいものを観てしまいました。
★★★★★
追記 ( 子どもへの男女の意識差 )
2019/2/7 10:20 by さくらんぼ
女にとって自分の子どもは、出生の事実(現実的には、出生届・出生証明書)によって証明できます。血肉を分けた熱い関係であることがリアルです。
しかし、男にとってのそれは、民法第772条(嫡子の推定)や、認知の効力など、冷めた法律が必要になるのです。
日本にも、長男は養子に出して、末っ子に相続させる「末子相続」がありましたが、長男を養子に出す理由の一つに、「最初の子は、本当に自分の子どもか、男が不安に感じるから」とも言われていたようです。
あまり良い言葉ではないと思いますが、ちまたには、「女は子宮で考える」「男は頭で考える」という言葉もあります。
この映画「バハールの涙」にも象徴的なシーンがありました。
ヒロイン・バハールたちが、友人の妊婦たちと逃亡するとき、妊婦が急に産気づくのです。すると、雇っていた運転手(赤の他人)が不機嫌になり、「置いていく」とか、「金を二人分出せ」とか言うのです。「なら、赤ちゃんに言ってよ!」と怒るバハールですが、出産しないように、我慢するしかありませんでした。
そして、なんとか、国境を超える時がやってきたのですが、非武装地帯ような最後の30mは、徒歩で行かねばならないのです。苦しんで、今にも出産しそうな妊婦を支え、一歩一歩を励ましながら、二人三脚のように歩くのです。「人生で一番大切な30m」だと言って。
男女の、赤ちゃんに対する気持ちが、かいま見られたようなエピソードでした。
追記Ⅱ ( 産道 )
2019/2/7 10:29 by さくらんぼ
少し前にはこんなエピソードもありました。
戦士になったバハールが、「今がチャンス、攻め込もう」と上官に言うのですが、上官は「まだ、その時ではない」と動きたがらないのです。
なにか、熱い住民と、冷めた役人みたいな構図を感じましたが、そこは弁護士上がりのバハール。弁では誰にも負けないので、上官を説得して作戦開始となります。そして、バハールたちは地下道から攻め込むのですが、地下道は「産道」の記号でもあったのでしょう。
追記Ⅲ ( 世界の半分 )
2019/2/7 15:41 by さくらんぼ
夫を殺され、子どもを誘拐されたバハールは、終始哀しい顔をしています。
そんな彼女たちを撮る戦場カメラマンの女性は、砲弾の破片で片目を亡くしていました。
これらは、世界の半分を失った記号なのでしょう。
追記Ⅳ ( 「 女は天国ではない 天国の代わりにあるものだ 」 )
2019/2/8 8:52 by さくらんぼ
昔、なにかで読んだ言葉です。
「 女に殺されると 天国へ行けない 」
映画「バハールの涙」のチラシには、そんな、イスラム世界の言葉もありました。
イスラムのことを何も知らない私の、これは勝手な解釈ですが、「 女に殺されると 天国へ行けない 」は、「女を泣かせるような男に、天国へ行く資格はない」と言っているような気がしました。
追記Ⅴ ( 女に嘘はつけない )
2019/2/8 16:17 by さくらんぼ
( 映画「ソウル・サーファー」のネタバレにも触れています。)
>彼女は誰にも見えない波を察知したのでした。これはタイランドで、引き潮の後に津波が来る、ことを学習した成果ですね。彼女は手のひらで引き潮の存在を確認してからトライしました。( 映画「ソウル・サーファー」の私のレビューより )
映画「バハールの涙」にも、これを思いださせるシーンがありました。
ある日、女性兵士たちが陣地でくつろいでいると、突然バハールが言うのです。「銃声が聞こえない。静かすぎる…」と。
もしかしたら、あのあたりでは、クルマのクラクションみたいに、銃声は生活音なのかもしれませんね。
しかし、その時は聞こえなかった。
なぜなら、敵が密かに攻撃行動を取っていたからです。
すぐに目視で、敵を発見するバハール。
この沈着冷静ぶりは、さすがリーダーですね。
追記Ⅵ ( 「十月十日」という戦場 )
2019/2/15 22:08 by さくらんぼ
>そして、なんとか、国境を超える時がやってきたのですが、非武装地帯ような、最後の30mは徒歩で行かねばならないのです。苦しんで、今にも出産しそうな妊婦を支え、一歩一歩を励ましながら、二人三脚のように歩くのです。「人生で一番大切な30m」だと言って。(追記より)
>なにか、熱い住民と、冷めた役人みたいな構図を感じましたが、そこは弁護士上がりのバハール。弁では誰にも負けないので、上官を説得して作戦開始となります。そして、バハールたちは地下道から攻め込むのですが、地下道は「産道」の記号でもあったのでしょう。(追記Ⅱより)
そして、非武装地帯を抜けた直後に、道路上で、彼女は出産するのです。へその緒がついたままの赤ちゃんが映ります。この強烈なクライマックスは、映画史に残る、名シーンの一つになるかもしれません。
「女性にとって、妊娠と出産の十月十日とは、いったい何なのか」。
男の私にとっては分からないことだらけですが、「命をかけた、子宮からの子ども救出作戦の、十月十日だった」のかもしれませんね。運が悪ければ、子どもの死産もあれば、母が亡くなることもあるのですから。
もしかしたら、この映画は、ISからの子ども救出作戦の中に、女性の十月十日を、騙し絵のように書き込んだものだったのかもしれません。
追記Ⅶ 2022.3.18 ( ウクライナのお母さん )
『 ロシア軍に子供を殺害されたウクライナ女性が入隊「プーチンは代償を払うべき」 』(Yahoo!ニュース)
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)
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