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#ネタバレ 映画「星の子」

「星の子」
2020年作品
姪っ子が出てる、みたいな
2020/10/20 20:18 by さくらんぼ(修正あり)

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

思いのほか地味な作品でした。

ヒロイン・芦田愛菜さんを子役時代から知っている私は、親戚のおじさんにでもなったような気持で、この作品を観ることが出来ました。たぶん皆様も同じだと思います。

実際、親戚のおじさんが重要な役で出てきます。

しかし、ラストが少しあっけなかったでしょうか。

でも、芦田愛菜さんの魅力で魅せました。

ところで、彼女の魅力って何でしょう。

美人には違いありませんが、育ちの良い、普通のお嬢さんの空気感もあります。

そこにいるだけで信頼できる、安心させるものがあるのです。

演技以前に内面からにじみ出るものかもしれませんね。

★★★☆

追記 ( 映画「天国にいちばん近い島」 ) 
2020/10/20 20:21 by さくらんぼ

この作品を連想しました。

オマージュかどうかは現段階では分かりません。

追記Ⅱ ( 彼女は何と答えたのか ) 
2020/10/20 22:02 by さくらんぼ

(  以下、映画「天国にいちばん近い島」のネタバレです。 )

映画「天国にいちばん近い島」の中盤に「グリーンフラッシュ」が出てきます。

映画「星の子」では「グリーンフラッシュ」が「流れ星」に置きかえられているように思います。

そこが映画「天国にいちばん近い島」同様、ヒロインの人生を左右する運命の時間であるために、映画「星の子」のチラシにも載っているのだと思います。

「グリーンフラッシュ」も「流れ星も」、同時に見えた者は運命共同体の記号ですし、見えなければ違います。

自分が見えるのか見えないのかは、他人には判別できませんので、嘘が可能です。

つまり、嘘をついても一緒になりたいのか、嘘をついても別れたいのか、という状況なのです。

この時、ヒロインの無意識の領域が試されています。

追記Ⅲ ( グリーンのジャージ ) 
2020/10/20 22:05 by さくらんぼ

>「グリーンフラッシュ」も「流れ星も」、同時に見えた者は運命共同体の記号ですし、見えなければ違います。(追記Ⅱより)

そう言えばヒロインの両親も、河童みたいな、おそろいのグリーンのジャージでした。

追記Ⅳ ( 映画「天国にいちばん近い島」② ) 
2020/10/21 8:46 by さくらんぼ

>映画「天国にいちばん近い島」の中盤に「グリーンフラッシュ」が出てきます。(追記Ⅱより)

「グリーンフラッシュ」の話、あちらに詳しく書いたかと思っていましたが、まだでしたので書いておきます。

映画「天国にいちばん近い島」では、ヒロインの女子高生・桂木万理(原田知世さん)は、父の死をきっかけに、生前父が話してくれた天国に一番近い島・ニューカレドニアへ一人旅に出かけます。父の想いを追いかける追悼の旅でした。

島でいろいろあって、桂木万理は無資格の日本人ガイド・深谷有一(峰岸徹さん)と知り合い、ガイドを頼みます。桂木万理としては父が話してくれた通りの(イメージの)場所へ行かなくては島まで来た価値がありません。団体ツアーで一般的な観光名所を巡っても意味がないのです。

すると、南の島で若い男女が二人っきりで観光することになります。桂木万理は父への想いから執拗に深谷有一に食いつきます。

実は深谷有一も最愛の彼女と別れた過去があり、ヒロイン同様に喪失感を抱えていました。そんな折、目の前に若い桂木万理が現れ、疑似デートになってしまったものだから、「この娘(こ)とならやり直せるかも…」と誤解したのです。

しかし、大人である深谷有一は単刀直入には告白しません。

ある夕方、「グリーンフラッシュ」が見える海辺の丘に、桂木万理を誘うのです。

そして言います。

「 (海を見つめ)ここから『グリーンフラッシュ』が見える。

昔、『私にも見える!』と言ってくれた女性が一人だけいた。

彼女とはもう別れてしまったけれど…君には見えるかな…。

そう、今だ! 」。

と言って夕日を指さします。

数秒の後、桂木万理は残念そうに言いました。

「私には見えないわ…」と。

すると、少しがっかりしたような深谷有一が、「良いんだ、僕が悪かった」、「君はとても賢い人だ、ガイドはもう終わりにしよう」と、急に去っていきます。

突然のことに混乱し「行かないで」と追いかける桂木万理に、ふりかえった深谷有一は「それは君が決めたことだよ」と、やさしく諭しました。

桂木万理が自分に恋心を抱いているのか否か、それをリトマス試験紙のように調べたかった深谷有一は「グリーンフラッシュ」を利用したのですね。

恋心があれば、見えなくとも「見えたわ!」と答えると思ったのです。逆に言えば、見えていても「見えないわ…」と言うことが出来ます。

桂木万理は無意識の領域でそれを察知し、危険回避のために「私には見えないわ…」と答えたのでしょう。

だから「お付き合いできません。ごめんなさい」に等しい言葉だったのです。

( セリフの詳細は正確ではありません。昔見た記憶ですから。 )

追記Ⅴ ( 映画「天国にいちばん近い島」③ ) 
2020/10/21 9:03 by さくらんぼ

>…南の島で若い男女が二人っきりで観光します。桂木万理は父への想いから執拗に深谷有一に食いつきます。(追記Ⅳより)

深谷有一がどこへ連れて行っても、桂木万理は「ここじゃないわ!」を繰り返します。

(話が前後しますが)もしかしたら、「いいかげんに気づいてよ! 私が求めているのは、あなたからの求愛よ!」と言っていると、いつしか誤解したのかもしれませんね。

それでなくては、ガイドが仕事なのに淫らに客に手をつける理由が希薄です。

追記Ⅵ ( 世の中は「是々非々」で ) 
2020/10/21 9:43 by さくらんぼ

話を映画「星の子」に戻します。

これは思春期の少女が自分探しをするお話だと思いました。

子どもは、男女問わず、価値観の違う親と衝突することが多いですが、相違をより明確にするために新興宗教が出て来るのだと思います。

親は子に口うるさく説教をするものですが、普通は、子ども可愛さ、子どものためを思っての事です。

親が新興宗教に心酔しているのは、ヒロイン・ちひろが生まれた時の病気を、新興宗教が奇跡的に直してしまったからです(少なくとも両親はそう信じています)。

つまり、ここでも「子どものために」が関係しています。

ちひろは両親が大好きですが、新興宗教についてはまだ答えが出ていません。

そして、家庭の外はどうかと言えば、憧れていた先生は両親や自分を侮辱しましたし、親戚のおじさんも両親を騙して悲しませました。ですから、外界も完全に同意できる存在ではありませんでした。

そんな中をさすらい、やがて、ちひろは、ちひろなりの人生観を構築していくのでしょう。

親子で宗教が違うことはありえます。昨今では子どもが無宗教になることもあります。

だからと言って、人間関係まで壊す必要はありません。

ちなみに、ちひろはノートに好きな男子の似顔絵を描くのが好きでした。何人も。

理想を追い求める姿が「面食い」として記号化されていたと思いました。

あれも自分の一つ探しでしょう。

追記Ⅶ ( 日本は「八百万の神の国」ですから ) 
2020/10/21 9:58 by さくらんぼ

チラシの写真。

星を眺める3人の上に、花押のような「星の子」のタイトル文字が。

そして、「星の子」の横線が一本3文字を貫いています。

流星の記号ですね。

3人が同時に見えたという記号でしょうか。

それを別としても、あの状況でちひろが「見えないわ…」とは、言えないのではないかと、私は思いました。

しかし、「見えた」ことと新興宗教とのかかわり方、その深さは、ちひろ流で生きていくのでしょう。

追記Ⅷ ( 誤記の訂正 ) 
2020/10/21 16:44 by さくらんぼ

>ちなみに、ちひろはノートに好きな男子の似顔絵を描くのが好きでした。何人も。

>理想を追い求める姿が「面食い」として記号化されていたと思いました。

>あれも自分の一つ探しでしょう。(追記Ⅵより)

恥ずかしながら、私の文章には誤記等が多いですが、読み返してみると特におかしいので、上記を下記のように訂正させて頂きます。

>ちなみに、ちひろはノートに好きな男子の似顔絵を描くのが好きでした。

人々が理想を追い求める姿が「面食い」として記号化されていたと思いました。

>あれも自分探しの一つでしょう。

追記Ⅸ ( 人生はコーヒーとケーキのようなもの ) 
2020/10/21 17:15 by さくらんぼ

>これは思春期の少女が自分探しをするお話だと思いました。(追記Ⅵより)

>ちなみに、ちひろはノートに好きな男子の似顔絵を描くのが好きでした。

>人々が理想を追い求める姿が「面食い」として記号化されていたと思いました。

>あれも自分探しの一つでしょう。(追記Ⅷより)

もう少し焦点が合ってきたように思います。

自分探しをして、理想を求めるのは良いですが、面食い女子が最高の美男子を求め続けるように、人生は「楽」だけに生きることは出来ないようです。

映画「星の子」の中には象徴的にコーヒーが出てきます。

あれは「苦楽」の「苦」の象徴として登場していたのでしょう。

お姉さんはブラックコーヒーを旨いと飲み、ちひろが「苦い」と言うと、「そのうち美味しくなるわよ」と大人ぶるシーンがありました。

そして、その後には、喫茶店でコーヒーとケーキを前にして、おじさん家族と話すちひろのシーンもありました。

おじさん家族は、ちひろが大学生になるのをチャンスだと思い、表向き「大学に近いから」という理由でおじさん家に下宿するよう誘っていたのです。

真の理由は「新興宗教に心酔している両親からちひろを引き離すため」ですね。

しかし、いつのまにかブラックコーヒーの旨さを知っていたちひろは断りました。頑として。

甘さと苦さが交錯するテーブルでした。

この作品の主題は、「人生はコーヒーとケーキのようなもの」なのかもしれません。

「太極図」の陰陽の思想を、現代風にアレンジしたものでしょうか。

追記Ⅹ ( 3者をつらぬく共通項 ) 
2020/10/21 22:49 by さくらんぼ

>この作品の主題は、「人生はコーヒーとケーキのようなもの」なのかもしれません。

>「太極図」の陰陽の思想を、現代風にアレンジしたものでしょうか。(追記Ⅸより)

上記は映画「星の子」の主題だと思いますが、宗教団体とは「天国」の記号でもあったのかもしれませんね。

映画「天国にいちばん近い島」(1984年)も、天国だと思っていたニューカレドニアにを舞台に、登場人物のほとんどに「苦楽」の「苦」があることを描いていました。

また、原作小説「天国にいちばん近い島」(1966年)も、昔読んだだけで正確には覚えていませんが、アルミの原材料になるボーキサイトをめぐって、天国に買いに来る日本人が受ける、現地人からの差別の「苦」を描いていました。

つまり半世紀以上前から、同種の話が繰り返し作られていたことになるのです。

それぐらい、若い人に伝えたい、普遍的で大切な人生観なのでしょう。

追記11 ( 映画「天国にいちばん近い島」④ ) 
2020/10/24 13:51 by さくらんぼ

私は「天国にいちばん近い島」が好きです。

映画版も素晴らしいですが、原作小説「天国にいちばん近い島」(1966年)が一番泣かされました。

( 以下ネタバレです。)

『 ニューカレドニアに、住民からバカにされ、誰も相手にしてくれない男がいました。

これは、島に着いたばかりの、何も知らない若い女性が、男に「こんにちは」と挨拶したことで始まる物語です。

やがて女性は病気になりますが、誰も頼る人がありませんし、医療費も足りません。

その噂を聞いた男が、全力でサポートを開始するのです。

男は、その鬱積した120%の気持ちを、波動砲のように、彼女という自分の味方を、全力で応援することで放出したのです。 』

追記12 ( 映画「天国にいちばん近い島」⑤ ) 
2020/10/24 14:14 by さくらんぼ

追記11に、原作小説「天国にいちばん近い島」で、住民からバカにされ誰も相手にしない男に「こんにちは」と挨拶したため、後に、男から助けられるヒロインの話を書きました。

このエピソードが、映画「天国にいちばん近い島」では、追記Ⅳに書いた、評判の悪い無免許ガイドの話になり、グリーンフラッシュで「私には見えないわ…」と答えたために、直後に捨てられるヒロインになっていたのだと思います。

それが映画「星の子」になると、新興宗教のために評判の悪い両親と星を見るヒロインの話になるのでしょう。三度目の今回は答えが伏せられていましたね。

そうであれば、映画「星の子」の中で、「それは噂でしょ」と悪い話は否定するヒロインの口癖の意味が分かろうというものです。

やはりこの映画「星の子」は、映画「天国にいちばん近い島」へのオマージュのように思います。

追記13 ( 映画「天国にいちばん近い島」⑥ ) 
2020/10/31 9:26 by さくらんぼ

映画「天国にいちばん近い島」のヒロイン・桂木万理(原田知世さん)は、島で同年代の日系三世の青年・タロウ(高柳 良一さん)と知り合います。

その後、いろいろあって、桂木万理はタロウの家に泊まることになるのです。泊まると言っても変な意味ではありません。だいいちタロウは父と住んでいますし。

その夕方、桂木万理はドラム缶の五右衛門風呂に入り、なぜか泣くのです。昔どこかで、これが「監督こだわりのシーンだった」と読みました。

では、なぜお風呂で泣くのかを考えてみました。

もしかしたら、あれは誕生の記号だったのでしょうか。五右衛門風呂は子宮の記号でしょう。

父が唯一の恋人だった子どもの桂木万理が、追悼の旅で大人への脱皮を果たし、見知らぬタロウに一目ぼれしたという誕生なのです。だから泣きます。

と同時に、「旅人と住人が恋するということは、別れの哀しみとセットだ」という残酷な事実を、無意識のレベルで認知したから泣くのでしょう。

実は、タロウの父・タイチ(泉谷しげるさん)が、タロウが桂木万理に恋していることに気づき、「旅人に恋してはいけない。すぐに帰っていく人だから」とクギを刺すシーンがありました。すでにタロウと桂木万理は相思相愛なので、タイチの言葉は桂木万理の気持ちを代弁する伏線でもあった可能性があります。

ところで、映画「星の子」には、クライマックスに親子三人で、山に流れ星を見に行くエピソードがあります。

その時、不安なヒロイン・ちひろが、「お風呂に入ろうよ!」「早くしないと閉まっちゃうよ」みたいなセリフを2~3回言うのです。やはりお風呂にこだわっていました。映画「天国にいちばん近い島」の大林監督のこだわり通り、お風呂は避けて通れないようです。しかし、映画「星の子」ではお風呂に入れてもらえないのです。両親はちひろの言葉を無視して山を登り続けます。

ちひろの言葉を無視したということは、「両親からの脱皮は許しません」という記号になるのではないでしょうか。やはり、ちひろには「流れ星を三人同時に見る」という選択肢しか残っていないようです。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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