「留守番電話」 青山勇樹
「留守番電話」という詩を紹介します。
ひとは沈黙がおそろしいので
おしゃべりをやめることができない
ひとは無がおそろしいので
遍在したいと願うのだ
無を語るには沈黙しかないのに
電話にさえ私はいないと云う声がいる
私はいないというそのことを
あたかも在るというかのように
在ることはつねにかなしみである
在ることについては語らねばならない
それがたとえばこんなふうに
とるにたらない詩であるとしても
言葉はいつもうごきだす
沈黙へそれとも沈黙から
受話器を置くと光がまぶしくて
私は青空について語りはじめる
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あなたの心に、言の葉を揺らす優しい風が届きますように。光と戯れる言葉のきらめきがあふれますように。