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「未来」 青山勇樹
「未来」という詩を紹介します。
欄干にもたれても
昨夜の夢がかえってこない
そんなときは蝶になって
まだ朱け染めぬ海峡を渡る
それにしてもきのうの夢は
いままでにかえってきたためしがない
だからもうすっかり蝶になってしまって
こうして渡りつづけてはいるが
まだ海流は暗く閉じたままで
いつまでも向こうの桟橋を教えない
きっといまごろその波止場では
あちこちの倉庫の開かれる軋みや
動きはじめる貨車の響き
行き来する数えきれない靴のざわめきへ
カモメが青く舞い降りているはずなのに
ありあまるほどの朝のひかりが
そこには置かれているはずなのに
たどりつけない
こうしてただ蝶として
時間のはざまを渡りつづけるばかりで
きのうの夢は何だったのかと
きのうの夜はどこへいったのかと
用意されないおおきな答えに
自分自身が成りかわろうとするように
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![青山勇樹](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/17224298/profile_9a30a8d48dd21473992d398497de06be.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)