ブラストモーションの使い方を考える①(基本的なスタッツについて)
著:原島(監督)&梅村(部長) 編:梅村(部長)
皆様こんにちは。
今回は本校で打撃練習をするときの必須アイテムであるBlast Baseball(紹介されている媒体によって表記にはブレがあるようです)についてお話しします。前回までのRapsodo Pitting2.0シリーズが好評をいただいたので、今回もほめていただけるようにプレッシャーを感じながら頑張って書きます。
これがリリースされるのは4月の下旬頃になるでしょうか(部長の頑張り次第)。新入生が入部してようやく練習に慣れてきた時期だと思います。GWが終われば一気に夏大会の雰囲気になります。背番号の発表や抽選などのイベントが立て続きに起きるので、夏大会まであっという間でしょう。
ただ本校は平常運転なので(部長次第)のんびりnoteを続けていきます。Twitterもよろしくお願いします。
1 Blast Baseballとは
担当:原島(監督)
Blast Baseball(以下Blast)とは、端的に申し上げますと「スイングの測定機」です。具体的には、バットスピードや手の最大速度などを中心とした「速度」の計測と、オンプレーンやアッパースイング角などの「スイング軌道」を計測してくれます。その他具体的な計測項目については以下のHPをご覧ください。
https://jpn.mizuno.com/baseball/products/BLAST
今回の記事では、Blastを使った計測で本校が気にしている数値と、それに対する考え方についてお話できたらと考えています。
2 まずはスイングスピード
担当:梅村(部長)
Blastをいざ使おう!となった時にまず基本になるのがやはりスイングスピードでしょう。正確には「バットにボールが当たったとき(インパクト時)」のスイングスピードを測定しているとのこと。よく報道などでも「〇〇のスイングスピードは△△km/h!」と表記されますから、最もポピュラーな指標と言えるでしょう。
スイングスピードはそのわかりやすさから本校の部員たちが一番気にしている値でもあります。毎スイングごとに計測値がタブレット画面に表示&自動音声にて再生されることもあって、本人はもちろん周りにいる部員にも結果が伝わります。ロングティーをすると、「今の良かったんじゃない?ほら95超えた!!」「95ぐらいなら俺も出したことあるから!!」などと張り合っている姿をよく見かけます。
また、疲労のパラメーターとして使いやすいのも特徴です。持ちスピードが100km/h以上の選手でも、20スイング、30スイングとスイングを続けていると徐々にスイングスピードが低下してきます。そのタイミングで声をかけて休憩をさせることもできますし、スイングスピードが出ていない日には無理せず休ませることもできます。非常にステレオタイプな指標ではありますが、それゆえにわかりやすく、大変便利でもあります。
3 こっそり注目している指標:「加速度」
担当:梅村(部長)・原島(監督)
部長と監督が勝手に重要な指標として注目しているのが「体の回転によるバットの加速度(初動)」です。あまりにも長いので、本校ではだいたい「バットの加速度」あるいは「加速度」と呼んでいます。生徒に至っては面倒がって「G(加速度の単位がGなので)」と呼んでいる場合もあります。ゴキブリかな?
加速度はBLASTの初期設定では下の方に表示される、少しわかりにくい指標です。また、プレミアム(有料)に登録しないと見れなかったり、日本語版HPではあまり取り上げられていなかったり、そもそも意味がわかりにくかったりといった理由からか少なくとも日本国内で注目している団体は少ないように感じます。
実際、昨年日本野球科学研究会(現:日本野球学会)に参加させていただいた際に発表団体のポスターを拝見しましたが、スイングスピードを指標として用いる団体はあっても、加速度を取り上げる団体はほとんどありませんでした。
こう書くと本校が勝手に意味不明な指標に着目しているだけのように思えてきますが、実は根拠があります。こちらの記事をご覧ください。
そう、みんな大好きドライブラインはスイングスピードとAttack Angle(日本語:アッパースイング度)に次いで加速度(英語:Rotational Acceleration)を重要視しているようなのです。
重要視する理由として、ドライブラインはこの記事内で「バレルゾーンに入るようなバットスピードに素早く到達できること」を挙げています。つまり、加速度が大きい打者はスイングの初期でバットが十分に加速できているため、振り遅れても打球を飛ばしやすくなると言えるのです。
ちなみに米国のBLAST本社はドライブライン以上に加速度を重視しているようです。別の記事では「選手を評価する際に、スイングスピードが選手のフロア(床≒現在地)だとしたら、加速度はシーリング(天井≒潜在能力)」とまで書いています。
日本ではまだあまり普及していませんが、開発元のアメリカではかなり重要視されているようです。
また、身体の回転を上手く使えているか・金属打ちや手打ちと言われる打ち方になっていないか、という点を評価するためにも加速度は重要であるように思います。
本校の部員は初心者が多いため、スイングの仕方を全く知らない状態で入部してくることもしばしばです。そういった部員はスイングが腕の力だけになってしまい、下半身→トルソー→腕→バットの順にパワーを伝えることができません。
また、いわゆる金属打ち・手打ちと言われるバッターは、加速度が計測される段階(振り始めの段階)でバットが遠回りをしてしまうため、スイングスピードが大きくなっても加速度は伸びません。このようなバッターはスイングスピードは速いけど、実は上半身の筋肉が大きく寄与していた…ということになり、よりレベルの高い投手と対戦した時に全く歯が立たなくなってしまいます。
これらの選手を指導する場合に、上手く体重移動をして、スムーズにバットを振れているかを確認するために加速度が有効であると考えています。上手く体重移動してバットを振れるようになってくれば、加速度やこの後説明する手の最大スピードの値もよくなってくるため、単に目で見るよりも定量的に上達度合いが測れるというわけです。
ちなみに、先ほど少し触れた手の最大スピード(英:Peak Hand Speed)」もまた、打撃ポテンシャルを測る上で重要な数値なようです。
ただ、以下の記事によると、Blastの本社は身体の回転に関連する重要な指標であると考えているものの、「手の最大スピードは体の回転がうまくできていれば自然に上がるものであり、手の最大スピード自体を向上させるようなトレーニングドリルはない」と指摘しています。
この点を考慮すると、加速度が上がってきさえすれば手の最大スピードも上がるだろうし、わざわざ注意して見るほどのものじゃないんじゃないか?というのが本校の姿勢です。もちろん、この考え方が合っていると言えるほどの自信はないわけですが……。
4 Blastを導入すると何がよいのか?
本校が考える、Blast導入の利点は大きく分けて以下の3点です。
それぞれについて解説していきます。
⑴ 能力向上が可視化されやすくなった
これまで、バッティング練習の指標は打球の飛距離でした。ただ、いくら打球が飛ぶようになったかどうかと言っても数値としては表しにくく、可視化が難しいという問題点がありました(もちろん柵越えした、フェンスまでワンバウンドで届いたなどとはいえましたが)。
しかし、Blastを導入することで、それぞれの部員が自分の持ちタイムならぬ持ちスピードを把握できるようになった結果、練習やスイング改善の成果が非常にわかりやすくなりました。きちんとトレーニングすれば能力は伸びる、を実感できるようになったのは大きな利点です。
それもあってか、ロングティーの時には多くの部員がBlastをつけたがります。Rapsodoもそうですが、彼らにとってBlastはもはや練習に欠かせない存在になっているようです。
⑵ バッティング練習のダラダラ感が減った
バッティング練習、特にティーバッティングはダラダラになりやすい練習です。本校はタナーティースタンドを使ってロングティーをしていますが、どうしても集中力が切れ、スイングが弱くなってしまう部員がよく見られます。
しかし、Blastをつけてしまうとそうはいきません。毎回記録が出るためだらけたスイングをすると、「お前スイング遅いぞ」「だらけてるんじゃない?」と煽られてしまいます。当然1スイング1スイングに対して力を入れて取り組みますし、スイングスピードを上げるための方法を模索し始めます。
また、周りも煽っているだけではいられません。だらけていると、煽られていた部員に「じゃあ俺より良い記録出してみろよ!」と言われてしまうからです。
おかげで指導者がつきっきりでなくともそれなりに真面目にバッティング練習をするようになりました。Blast様々です。
⑶ 改善点がわかりやすくなった
Blastは多くの指標が即時フィードバックされるため、スイングの改善点が瞬時に判断できるのも優れた点です。「今のはちょっとアッパースイングすぎるね」「もうちょいアッパー気味でもいいよ」といったバット角度の話、「今のは体の回転が上手く使えてたっぽいよ」といった体の回転に関する話など、様々なチェックポイントの判断が格段にしやすくなりました。
特に私(部長)はバッティングの素人ですので、なかなか的確な指導をすることができません。「ドアスイングっぽいな」ぐらいはわかりますが、「〇〇がこう悪い!」のような話をするのは正直気が引ける部分が多々あります。
その点がBlastをつけて練習してもらうことでかなり改善されました。数字として出るので、ある程度自信を持って「数字がこうだからこうなんじゃないかな」と言うことができます。間違った指導をしているんじゃないか、という不安を減らしてくれるのは大変ありがたいです。
あと何より記録が出ると意味もわからず楽しいです。
終わりに・今後の使い方について
担当:梅村(部長)
現在はBlast1台を全員で回して使っていますが、ゆくゆくは1人1つずつ自分のBlastを持っている、というのが理想だと考えています。
というのも、複数人で使いまわしていると過去のデータを確認するのが困難だからです。
一応スイングを保存するときには自分の名前をタイトルに入れておくよう言ってありますが、やはり確認するのが面倒なのは変わりません。また、Blastのデータ集計ページであるBlast Connectはデータのダウンロードに異常に時間がかかるため、1000スイングをダウンロードしようとすると日が暮れてしまします。
データ分析するにも、各々がアカウントを持ってデータを管理してくれたほうがはるかに楽、というわけです。
また、現在は手を付けられていませんが、スイング軌道系の指標にも手を出していければ……とは思っています。そこまで行くにはまずスタメン全員がスイングスピード100km/h超えてもらわないといけませんが。
はっきり言って、まだまだ細かい技術を指摘するレベルにはないというのが正直なところです。大事なのはパワー。さあ、今日も筋トレです。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
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