『群像 2023年 05 月号』
追悼大江健三郎が読みたく図書館で読んだ。尾崎真理子のギー兄さんが柳田國男説がなるほどと思った。
特集・川上未映子は、『黄色い家』の情報が多いかな。ゴッホの「黄色い家」のイメージか。その対極にあるのがラッセンの癒やしの絵画だという。そういえば浴室に貼っていたことがあったな。1990年代の家族解体の物語。疑似家族もヤクザ化していくというか、そういう世界も解体していく犯罪小説みたいな。川上未映子のイメージとしては、大江健三郎→村上春樹→川上未映子という大作家になるイメージがある。
創作は石田夏穂『我が手の太陽』。デビュー作『我が友、スミス』で芥川賞候補になった新人さん。深読みはではなくざっと読んだ感じは、溶接工の職人小説というような。下請け産業の厳しさを描いていた。溶接工の繊細な描写とか本人が経験あるのかと思うような描写だった。職人の技術よりも企業倫理みたいなものによって、ベテラン技術者の生きにくさ。彼女の小説も職人的というべきかもしれない。
他は連作とかで読まなかった。新人一つ読めばいいかなと。
高原到『復讐戦のかなたへ——安倍元首相銃殺事件と戦後日本の陥穽』には興味深い批評だった。最近のヒット作、逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』と安倍元首相銃殺事件犯人を比較批評した視点が面白かった。この人の本を読んでみたくなる。
毬矢まりえ×森山恵の交換日記は、A・ウェイリー版『源氏物語』を翻訳した二人が『源氏物語』について語る話が面白い。今回は、「末摘花」編で彼女は渤海という国の血を引いているので中央アジアの美人系なのだが、当時の日本では美人とされなかったがロシア人的な種族だと想像する。
『群像』というと合同批評があったのに今はないんだなと。漫画とかあってバラエティーに富んでいるが以前読んでいた者としては隔世の感があった。年取ったと感じる。