これ以上の豪華絢爛な日本映画はない
『細雪』(日本/1983) 監督市川崑 出演岸惠子/佐久間良子/吉永小百合/古手川祐子/伊丹十三/石坂浩二
昨日は神田の古本市に行った後で神保町シアターで市川崑監督『細雪』を。神田明神でも桜は咲いていたのだが映画の桜には負けた。こんなところがあるんだ。この豪華さは、映画ならではのベンヤミンがいうところの「集団の夢」なんだと思う。
これ以上の贅沢はないというぐらいの贅沢な映画だ。女優陣も凄い(もしかしたら1959年版や今の日本の女優を揃えればエンタメ的には出来るのかもしれない)が、やっぱ四季折々の日本の情景だろう。バブル期の映像で、もうこれ以上の日本の美の映像は撮れないと思う。市川崑監督の徹底した映像美を堪能するには大画面で観たい映画。とても(設定が)戦時とは思えない贅沢さでした。
谷崎潤一郎『細雪』は、消えゆく日本の情緒を描いた作品で、それは関西の貴族文化(大阪の商家でブルジョア)が、贅を尽くした日本の四季折々の姿である。例えばヨーロッパだったらヴィスコンティの貴族映画があるが、日本でここまで描いた作品はなかったのではないか。バブル時代だから出来た斜陽の映画産業の意地のような作品かもしれない。
そういう意味で谷崎潤一郎の意地(戦時であの豪華絢爛の姿を描く)と市川崑監督の意地がエンタメという映画産業の中で見事に重なりあった作品だ。ハリウッドでは作れない日本の美がある。
あの時代の豪華キャストを揃えた役者陣。長女の岸恵子の毒舌だけどあっけらかんとした明るさは、いい。岸恵子が初めていいと思った。佐久間良子は安定感。そして、吉永小百合のわからなさ、対照的に古手川祐子の強引さと。四姉妹それぞれの魅力を放っている。石坂浩二と伊丹十三の婿さんもアクセントになっている。
最後、江本(野球選手)と結婚するんかと思ったけど。それは現実を思ってしまったから。そこは愛嬌。