日本もこのぐらいの映画作らなきゃ
『チェルノブイリ1986』(ロシア/2020)監督ダニーラ・コズロフスキー 出演ダニーラ・コズロフスキー/オクサナ・アキンシナ/フィリップ・アヴデエフ
解説/あらすじ
若き消防士アレクセイは、元恋人オリガと 10 年ぶりに再会を果たし、彼女とともに新たな人生を歩みたいと願っていた。ところが地元のチェルノブイリ原発で爆発事故が起こり、それまでの穏やかな日常が一変。事故対策本部の会議に出席したアレクセイは、深刻な水蒸気爆発の危機が迫っていることを知らされる。もしも溶け出した核燃料が真下の貯水タンクに達すれば、ヨーロッパ全土が汚染されるほどの大量の放射性物質がまきちらされてしまう。愛する人のためタンクの排水弁を手動でこじ開ける決死隊に志願したアレクセイだったが行く手には、想像を絶する苦難が待ち受けていた…。
ウルトラマンがいないウルトラマンのような映画だった。敗北感しかないのだけれど。これロシアの政府や国営原子力企業の協力を得てと書いてあるが、ソ連時代だから作れたのか?官僚批判はしているし、はっきり人災だと言ってしまっている。火災発生時に火を消しに行く消防士の無謀さ。
我々も福島原発事故があったから、原発の知識はあるけど、その頃は素手で怪獣に立ち向かうような感じだったのか。放射線で黒焦げになる消防士たち。ケロイド状の顔や手足など目を背けたくなるような映像。それでも汚染水が溜まった中へ突入する者たち。原子炉の熱で60℃以上になるというのに軍隊は潜水訓練をしたり、医者は原子炉に入る前に熱中症になるとか言っていて、無理なことさせる上層部は今と変わらない。
一度目は失敗して、再度志願者がいないからと原子炉の中に再度突入していく主人公。ここは映画だからだろう。一応エンタメ系のヒーロー映画にはなっている。ただあまりにも無謀すぎる。
脚本も最初は恋愛ドラマ風の10年前に別れた彼女が子供を生んでいたというしょうもない話から、チェルノブイリを離れて安全なキエフに住もうという矢先に事故が起きるのだった。消防士たちと送別会を華々しくやた後に、全員死亡。送別会での消防士の友情や上下関係があるというのを見せといて、次々に倒れていく彼ら(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ『チェルノブイリの祈り』も参考にしたような)
映画を作った監督はロシア人でも今回の戦争には反対声明を出している。そして何より軍隊の無謀さをも描いているのだ。その上官も死ぬんだけど。最初に失敗した後に病院に行く途中ですれ違う軍隊のトラックにひしめき合っていた兵隊たちのその後の運命を予測してしまう。
これは過去の映画ではなく、現にロシアがチェルノブイリを攻撃したというニュースもあった。それもこういう結果がわかっていながら上層部は兵隊に命令するのだ。国家とは恐ろしいものだ。
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