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熊は自然災害なのだろうか?

『羆嵐』吉村昭 (新潮文庫)

北海道天塩山麓の開拓村を突然恐怖の渦に巻込んだ一頭の羆の出現! 
日本獣害史上最大の惨事は大正4年12月に起った。冬眠の時期を逸した羆が、わずか2日間に6人の男女を殺害したのである。鮮血に染まる雪、羆を潜める闇、人骨を齧る不気味な音……。自然の猛威の前で、なす術のない人間たちと、ただ一人沈着に羆と対決する老練な猟師の姿を浮彫りにする、ドキュメンタリー長編。
本文より
渡道して以来かれらは、多くの先住者たちから羆(ひぐま)が内地の熊とは異った野生動物であることを知らされていた。内地の熊が最大のものでも三十貫(一一〇キロ余)程度であるのに、羆は百貫を越えるものすらある。また内地の熊が木の実などの植物を常食としているのとは異って、羆は肉食獣でもある。その力はきわめて強大で、牛馬の頸骨を一撃でたたき折り内臓、骨まで食べつくす。むろん人間も、羆にとっては恰好の餌にすぎないという。

小島慶子のラジオで知ったので購入したのは東日本大震災(2011年)の頃だと思う。それから積読状態だったのだが、アイヌの映画を見たり、船戸与一『蝦夷地別件』を読んだりして、北海道の開拓農民の話かもと想い出して手に取る。自然と人間の開発ドラマであり、羆は荒ぶる神的な位置だと思う。

アイヌでは熊は神であるわけだし、和人の北海道開発が原因かと思われる。しかしノンフィクションという体裁を取りながらもエンタメ小説で羆の恐ろしさがホラーのように描かれている。羆の恐ろしさは、被害者の悲惨な様子と熊に遭遇した猟師たちも竦んでしまうぐらいの凶暴さに描かれる。羆が途中からいつ現れて襲われるのかというのはホラー感を演出している。

途中で村のはぐれ者の猟師銀四郎と羆の戦いになるが、犬のアニメでそんなのがあったよな、と検索したら『銀牙 -流れ星 銀-』だった。


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