二人のシスターフッドとベテラン女優の絡み合い
『私がやりました』(2023年製作/103分/G/フランス)監督:フランソワ・オゾン 出演:ナディア・テレスキウィッツ、レベッカ・マルデール、イザベル・ユペール、ファブリス・ルキーニ、ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエ
フランソワ・オゾン監督は前作ファスビンダーのリメイク作『苦い涙』でもコメディでおもしろかったのだが、この映画はそれ以上に面白いのは主演の二人の女優とベテラン女優のイザベル・ユペールを上手く絡ませたところだろう。フランスのコメディ映画の真髄のような1930年のノスタルジックな映像といい、ファッションといい、映画のオマージュも感じるし、何よりフランスのコメディが随所に見られるような映画だった。もともとフランスはコメディ・フランセーズという喜劇作家のモリエールが作った劇団の伝統が
あり、その出身者が『苦い涙』に出演していたイザベル・アジャーニなのであった。
新人女優役のナディア・テレスキウィッツのノスタルジックな可愛さと友人の弁護士役のレベッカ・マルデールのボーイッシュ的な魅力溢れるシスターフッド映画で、有名プロディーサーを殺害した疑いで逮捕された新人女優が正当防衛で無罪になり、いちやく脚光を浴びるが、無声映画の大スター役のイザベル・ユペールが私がやったとしゃしゃり出てくる。イザベル・ユペールの濃いすぎなベテラン女優と華やかな若手二人の演技が面白く。『苦い涙』では男優が暑苦しかったが、ここではイザベル・ユペールが暑苦しい演技だが、二人の若手が爽やかなんで良質の喜劇になっている。
おしゃれなエスプリというのか、そんな会話劇で見せるのだが裁判のシーンとか女性がどれだけ虐げられているかを熱演する被告人の女優の演技が面白い。打って変わってイゼベル・ユペールはマシンガントークというようなセリフで自己主張タイプのベテラン女優役で見事にコメディエンヌとしての存在感を示している。
フランスのコメディでこれだけ笑えるのは最近では一番ではないかな。フランスに限らなくてもこんなに楽しめる映画は今年一番かもしれない。とにかく三人の女優がそれぞれ個性的でいいのだった。