『疾走する俳句―白泉句集を読む』中村 裕
最近俳句の歴史本を読むことが多く「新興俳句」の白泉は「戦争が廊下の奥に立つてゐた」の戦争俳句で知られるが作者はあまり知られていない。それは「新興俳句」が弾圧された経緯があり、その後の俳句界は虚子の天下となった(戦意高揚句など作り「日本文学報国会」の会長にもなった)。虚子はただ俳句を守りたかっただけかもしれないが、白泉らの「新興俳句」の浮かばれないのは何故だろう?
白泉の「新興俳句」は文学的にも価値が高いと思う。有季定型の「季語」に変わるにはそれ以上の強い言葉を必要とするということで「戦争」を詠み続けたのだ。その時代に対する批評眼の鋭さ。そして戦後も俳壇に復帰することなくひっそりと亡くなっていくが句集を残した。
忍び寄る戦争の足音に耳を傾けるには白泉を読むがいい。