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刹那い青春映画の傑作

『花蓮の夏』(2006年/台湾/96分)【監督】レスト・チェン【キャスト】レイ・チャン,ジョセフ・チャン,ケイト・ヤン


2006年の公開以来、『花蓮の夏』は世界中のファンから大きな支持と愛情を受け、すでに中華圏映画界を代表するLGBTQ青春映画のひとつとしてその名を刻んでいる。この映画はもともとフィルムで撮影された。フィルムの映写機がデジタルに取って代わられ、オリジナルの映画を大スクリーンで見る機会は少なくなった。そのため、この映画に興味を持つ若い観客の多くは、この映画を見る機会が限られていた。今、デジタル修復という高度な技術によって、『花蓮の夏』はDCP上映されるようになり、あらゆる世代の観客がこの美しい感動的な物語に再び触れることができるようになった。
物語
台湾東部花蓮。小学校に通う優等生のジェンシンは、問題児のショウヘンと友達になるよう、先生から頼まれた。正反対な性格の二人だったが、いつしか親友となり、高校の頃には、お互いがかけがえのない存在になっていた。ジェンシンは、人知れず友情以上の感情をショウヘンに抱くようになり…。
そんな二人の前に、香港からホイジャという転校生の女の子が現れ、ジェンシンとショウヘンの関係に静かな波風が立ち始める。

台湾ニューシネマという映像美を感じる作品。LGBTQにこだわらなくてもいい青春映画。三角関係で友情か彼女かというテーマは夏目漱石『こころ』でも描かれていることだし。今だと女性はもっともの的な扱いなんだろうけど、ここの彼女は積極的。『突然炎のごとく』のような三角関係か?

男の中に女性性もあり、女の中にも男性性がある。その部分に惹かれていくのは男女というカテゴリーではないのだと思う。そこにショウヘンのどっちつかずの煮えきれなさがあるのだが、それはまだ青春という大人の打算がないからだろう。こういう同性愛展開だと流されるのは女の子の方なのだが、彼女の中にある男性性が魅力なんだと思う。

結局、通過儀礼として別れ別れになるか、一人が犠牲にならなければならないのだ。日本だったら誰か死んでいるだろうか?

刹那い青春映画の傑作の一つだと思う。

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