若き柏木の悩みは夕霧へ
『源氏物語 36 柏木』(翻訳)与謝野晶子( Kindle版)
この帖は柏木の独白から始まる。しにつつある柏木の「若きウェルテルの悩み」風だが、以外に紫式部は醒めていた。自業自得の部分もあるから。その後に小侍従に女三宮に託す手紙を書くのだが、その手紙が「あはれ」というのだが(みしろ小侍従にあはれと思って手紙を持っていてくれないか?ということのようである)、紫式部は柏木を「あはれ」とは思っていないのだ。それは女三宮との「あはれ」合戦という歌のやり取りになるからである。
柏木の最後の手紙を鳥の足跡のようでと書く紫式部である。さっさと飛んでいきなさいと言っているようでもある。
そして、女三宮は薫を出産。しかし光源氏は冷淡である。男の子なのがせめてもの救いだと考える。女三宮は罪の意識から出家を願う。光源氏が気にするのは世間体もあるが朱雀院への気持ちなのである。朱雀院も出家したが親としての煩悩(女三宮の心配)があり光源氏を尋ねてくる。光源氏は怨霊のせいにしているが、たびたびでてくる怨霊を紫式部は信じているのだろうか?物語上、辻褄合わせのために怨霊を召喚しているのではないか?それを招くのは光源氏の心なのである。
女三宮の出家は、藤壺の出家を連想させる。このことから女三宮の子供は柏木だということになるだろう。
煙合戦のもう一人の柏木は、夕霧に看取られて死ぬのだ。ここは友情物語になっている。この友情物語がアダになるのは、柏木の妻である落葉の宮の面倒を見てくれと頼まれるからだ。柏木も罪づくりな男だった。柏木の欲望が夕霧に乗り移ったのかも。
そして柏木の両親の悲しみと夕霧の和歌。煙は霞になった。
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