幻想文学の集大成的な
『源氏物語 42 まぼろし 』(翻訳)与謝野晶子(Kindle版)
紫の上が亡くなってからの追悼特集というような六条院の人々の様子を光源氏が訪れる(あるいは手紙が来る)の中で紫の上の春の間の季節が中心に回っていたのかとさえ思える。
第二部の終わりということで、総集編のように登場してくる六条院の人々。こういう作りが上手いというかいきなり新しい展開にはいらないでこういう箸休めの章を用意している。この繋ぎ目は次に主役となる人物紹介も兼ねているので、三宮(匂宮)は注目に値する。
和歌は春から始まって四季折々に読まれている。まさに歌物語に相応しい終わり方だと思う(まだ第三部が続くが)。その中でもっとも重要なのは神無月に詠まれた光源氏の和歌だろう。
六条院が幻のように建設された桃源郷であったとするならば、その魂たち(登場人物)は精霊なのかと思う。だから六条院の御息所(怨霊)となった場所を作り変えて聖霊たちの場所にしたのである。それは光源氏の幻だった。
その次の帖が題名だけの『雲隠』って凄いね。ジョン・ケージの音楽を凌ぐ凄さだ。『源氏物語』の革新性というか、まさに文学は「まぼろし」というフィクションを描くことだったと強烈に感じた。