右傾化への歩み
『新装版 昭和史発掘 (4)』松本清張 (文春文庫)
「小林多喜二の死」
「小林多喜二の死」は「プロレタリア・リアリズム 」小説の傑作『一九二八年三月十五日』は特高に逮捕され小樽の活動家が拷問にあう描写が凄まじく後の多喜二の拷問死を予感させる小説。だが多喜二が田口たきに書いた手紙の暖かさ。女郎酒場から見受けして自由の身にするが多喜二と母親の優しさにたきは迷惑かけたくなく別れていく。東京での『党生活者』でのハウス・キーパー問題。拷問死の遺体の酷さと母のことば。
「京都大学の墓碑銘」
京大法学部の滝川教授の『刑法読本』が文部省から問題とされ大学の自治を守る為に闘った法学部の教授たち。参考映画、黒澤明『わが青春に悔なし』。大学と学者への政府の介入。軍事は教育から。
「天皇機関説」
美濃部教授の「天皇機関説」が国会で問題にされ書籍は発禁処分、美濃部教授は貴族議員も辞任したが後に右翼に襲われた。日本の皇国化という時勢のなかで教育の場である大学が狙われた。その二つの事件に絡んでくる。
狂信的な右翼の理論家蓑田胸喜一派によるもの。
「陸軍士官学校事件」
2.26事件の二年前に起きたクーデター未遂事件。統制派と皇道派の対立があぶり出された。中心人物、青年将校はのちの2.26事件の主力メンバーとなる。(2019/09/29)