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五行詩は短詩だけど俳句や短歌に比べて規則もないのでもっとも作りやすい詩かもしれない。目指せ五行詩の芭蕉? 五行詩だけでなく他の多行詩も加えました。
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2022年10月の記事一覧

詩 十字架を背負ったものたちの交差点(クロスロード・ブルース)

詩 十字架を背負ったものたちの交差点(クロスロード・ブルース)

十字架を背負ったものたち
ボードレールが 朔太郎が 中也が
あるいは迷える子羊たち
ディックが 漱石が 芥川が

十字路に月は出ているかい
今は見えなくても待っていれば見えるはずさ
たとえば、その待ち時間に本を読めばいい
暗くて本を読めないのなら、思い出せばいい

一本の枯木も見えるはずさ
ベケットの『ゴドーを待ちながら』
ラディミールとエストラゴンはそこにいる。やがて、ポッツォとラッキーもやって

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詩「沈黙」

詩「沈黙」

言葉をさがして 沈黙してしまう
たどり着けるのか 爽快な言葉に
そんな言葉があったなら
詩を書かないだろう

喋るのが下手だからゆっくり探す
今日の言葉を 明日の光を
そんな言葉があったなら
幸福の中で眠るだろう

苦しんでたった4行の
言葉を連ねてまた4行と
死を詩と変換させて
生きている

死なないためにも

詩「メタセコイア」

詩「メタセコイア」

メタセコイア

メタセコイアの梢に
太陽は遠のく
古の下層に根を張り
死者たちと交信する

崩れかけたベンチに
私は浅い眠りに
陽だまりの中に
ぼんやり夢を見たのだろうか?

人は戦争で殺し殺し殺し
木は風を送り送り送り
鳥は歌を歌い歌い歌い
化石の中で眠る言葉よ蘇るがいい

ああ、わたしは優しい風の中に
鳥たちのさえずりの中に
彷徨ってしまった 出来るのなら
メタセコイアの樹木葬

詩

枯れアザミ

街道に咲くアザミはまだそこにいた
すれ違いざまにオレはいう、枯れちまって
赤信号の変わり目 棘に触れないように
酔っぱらいがからかい 足元がふらつく

紫の花に惹かれて持ち帰ろうと
棘げに刺され 血を流しやがった
あの紫はどんな薔薇のよりも
綺麗だった 今年の花の中でいちばん

もう冬になるっていうのに
このまま枯れても誰も刈ろうとしない
車がすれ違いざまに風で揺らし
嫌われ者の穂を

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無月

無月

無月

ほんとうに書くのだろうか
有為ならざる日々の果て
ほんとうにお前は生きているのだろうか
お前はお前の言葉を探している

ほんとうに下りてしまったのだろうか
無為なる傍観者の夢
ほんとうにこれでいいのだろうか
お前はお前の道を歩いている

躓くのが怖くて歩けない
それは実感
立ち上がるとふらつく
それは恐れ

夜間工事で眠れない日々
これ以上何を舗装しろというのか
逆光線 秋雨濡れ君はダダダ

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