読書録📚デジタル・ファシズム
デジタル給与、ベーシックインカム、キャッシュレス化、GIGAスクール…
どんどん進めばいいのに、と思っていたものたちの負の側面を次々告発していく内容でした。
なんで読もうと思ったんだっけ?図書館でずっと待っていたので、もはやなぜ読もうと思ったのかきっかけを忘れてしまったのですが、なんとなく読み始めて色々と驚き。
初めて知ったことも多く、まだ消化しきれていませんが、一旦気になったところだけ書いておきます。
各国が警戒する「Zoom」
オンライン会議ツール「Zoom」の暗号化キーが、中国の北京にあるサーバーを経由していたことが分かった(トロント大学グローバルセキュリティ研究所の公表より)
Zoomで行われた会議内容やユーザー情報が中国当局へ渡る可能性があることから、アメリカやドイツなど各国政府やグーグルやマイクロソフトなどの企業がZoomの利用を禁止する一方、日本では各省庁で利用可能になっている。(ただ、何かあったときのために「第三者に盗聴される可能性があるので注意」と注意書きは入れる余念のなさ)
生体識別情報を自動収集する「TikTok」
北京を拠点とする中国企業の動画共有アプリ「TikTok」も各国の警戒対象に。プライバシー保護法に違反しているとして和解金を支払う裁判以降、「生体情報を収集することがあります」との規約を追加。
これによりTikTokはユーザーからの許可なく、顔写真や声紋といった、生体識別情報の収集ができるようになった。
各国が警戒を強める一方、日本は寛容な姿勢を示している。
サーバーを制するものがデジタルを制する
各国で進むデジタル化。サーバーの拠点がすべての情報を握る。公共サービスをデジタル化し、日常の利便性を得るのと引き換えに、GAFAなどの巨大企業に差し出す個人情報は、一度渡したら最後、どの情報が、いつ、誰に、なんの目的で使われているかを確認することは難しい。
・エストニアのブロックチェーンを利用した規制例
・デジタル先進国台湾の個人情報保護システム
などの例は興味深かった。オードリー・タン氏の本も読んでみたい。
○○ペイに預金者保護法はない
PayPayなど資金移動業者は、銀行と違い登録制。万が一不正利用された場合、「預金者保護法」のような共通ルールはない。どんな条件の下にどう保障されるのかは、個々の企業次第。
デジタル給与についても、
どこの企業から、月々いくらの給料が支払われ、いつどこで使ったかの決済データは、すべて〇〇ペイ(資金移動業者)に収集されるが、それらのデータの利用方法や個人情報保護規定の全容は未だにグレーゾーン。
LINE Pay→韓国
PayPay→中国企業アリババの筆頭株主
Amazon Pay→アメリカ
楽天ペイ→中国IT大手から出資
日本で使われる資金移動業者の多くは外国資本であり、日本の法規制が及ぶとは限らない。
ベーシックインカム
ベーシックを提唱した竹中平蔵氏の主張
「ベーシックインカムのかわりに、生活保護や年金を廃止して、その分の予算を他のことに回す」
社会保障が次々廃止され、毎月「セーフティネット」と称し、デジタルマネーで給付金が振り込まれる未来…
セーフティネットは本当に誰にでも振り込まれるのか?信用スコアで蛇口(給付するか否か)の開け閉めを誰かに判断される未来が訪れる可能性はないか?
生徒たちの個人データを収集するグーグル
福岡県久留米市では、市内の全公立学校にグーグルのOSを搭載したクロームブックが一人一台導入された。
これによりグーグルは、タブレットの納入額をはるかに超える価値を持つ、小中学生の膨大なデータを収集できることとなった、一方、自治体側はそれを危機に感じることはない。
オンライン授業から「待つ」経験は得られない
学校でデジタル化が進んだ先にあるオンライン授業。効率的に学べる一方で、物理的に教室空間を共有する生徒の多様性を受け入れる必要はない。遅い子を「待つ」必要がない。
多様性を受け入れる「公教育の精神」とデジタルの間の軋みが、今後露呈してくる。
「デジタル・ファシズム」のなかで、最もファシズム化する分野は教育。
GAFAの外にも世界は存在する
デジタル化の波の中で、「GAFAの中で快適に生きる」「GAFAの中で評価される人になる」という思想は、じわじわ私達の世界観にに浸透してきている。しかし一度立ち止まって、足元で何が起きているのかを心の眼でしっかり見なければならない。
人間にとって大事なのは、「問う」こと。
所感
若干煽りすぎの内容(アメリカとドイツの例を挙げて「各国」と言ってしまったり、ちょっと日本と他国を無理やり区別して日本の危機感のなさを際立たせ煽ってきてる感もあるような気がしなくもないですが)と思いつつ、私の正常性バイアスが働いてそう思ったのかもしれない🤔
とはいえ、デジタルに詳しくないからといって、自社や各自治体のデジタル化を一企業(他国の)に丸投げしたり、「有識者」だと信じ切って、自分は無思考のままに一任してしまう(生殺与奪の権を握らせる)のはリスキーということは、伝わりました。
デジタルに疎すぎて、デジタルいいやん!と無批判に(ここが問題)推奨していたところもあったなと反省。
ちょっと自分に欠けていたデジタルに対する批判的問いをいただけたので、なぜ読もうと思ったのかは思い出せませんが、読んでよかったです。