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物語たち

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かこのnoteの物語たちを集めました。 心をこめて書きました。 読んでいただけたら嬉しいです。
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#小説

【物語】味わうべき恋かを確かめることは、美味しい果物を選ぶことと似ている《夢芽の…

私は、果物を買うのが、怖い。今日のりんごも、つやつやと鮮やかな赤をしていたのに、包丁を入…

夜が怖くて、明かりの中を彷徨っていた私を救ってくれるのは、暗闇なのかもしれない

*このお話はフィクションです。 「ねえ、お願いだから、電気、消さないで」 ずっと、夜が嫌…

前向きの前が、わからなくなってしまった時は

「もう、逃げたい。なにもかも、もう嫌だ」 目の前の少女の声に、昔の私が重なっていた。 「で…

真剣な場所で、「好き」に気づいてしまったら

どうしよう。好き、かもしれない。 こんなところで、どうしてこんな気持ちに気がついてしまっ…

いつもの電車に疑問が湧いたら、それは、「駆け出し下車」の合図なのかもしれない

「ドアが閉まりまーす。ご注意ください」 このドアは、いったい何回閉まったんだろう。6時4…

夢が途切れた時に見えるのは、本当になりたかった私、なのかもしれない

「この学校には、吹奏楽部、ないんだよ」 なんのためらいもなく、新しい学校の先生は言った。…

失恋の美味しい食べ終わり方

「振られちゃった……」 口の中でもごもごと、振られちゃったを繰り返している。もう2週間も経つというのに、仕事から帰ると、ただぼんやりと、意味のない言葉を、口の中で弄んでいた。 「別れようか」 2週間前だった。私は、そんな言葉が私たち二人に存在しているなんて、考えたこともなかった。でも、君は、気まずそうに、でも、考えた上での決断だという表情で、私に投げかけた。頭が真っ白になるというのは、まさにこのことで、私は、君の言葉をすぐに理解できないでいた。理解できないままでいたかったの

「ていねいな暮らし」は、おしゃれな紅茶がなくっても

「体と心を美しく! ていねいな暮らしをしよう!」 はあ。とため息をついていた。どうして、…

一夜遊びにはまった私のその後について

「あぁ、今日もつまらないキスをしちゃったな……」 おろしたてのヒールで、深夜0時の街を歩く…

伝えなかった告白を、この世界に残す方法って、あるのだろうか

耳の奥が、とくん、と鳴った。深夜11時30分。街中、駅前の交差点。南西の角の街路樹の下。少し…

家族って面倒。その理由がわかった時、私は、折り畳み傘になりたいと思った。

あー、最高だ。一人暮らし。 つくづく思う。 実家を出てから、もうすぐ7年。大学入学と同時に…

君とキスをしたから、「王子様」なんて、粉々に砕いて、捨ててしまおうと思った

「どうしよう。キスって、やっぱり、怖い」 心の準備はしていたけど、今日も私は思ってしまっ…

火照った男の手に抱かれながら、思い出したのはラムネの味だった

「マスター、いつもの」 男はそう言って、おもむろにカウンターに座った。私もその隣に座る。…

過去の恋に期待することは、未来の自分を信じることと、似ているのかもしれない

*このお話はフィクションです 「後ろを振り返るためじゃない。前を向くために、昔の恋に期待するのも、案外、いいのかも、しれないな」 私は、そう思った。 友達が話すのを聞きながら、大事なことに、気が付いたから。 昔の恋に期待するのは、前を向くことと、似ているような気がしたから。 昔の恋。過去の恋人。かつて憧れだった、片思いの人。 誰しも、忘れられない、あるいは忘れたくない恋の思い出をもっている。 別れてから、あの人がやっぱり良かったと気が付いたり、想いを伝えられずにさようなら